【連載】多様で健康的なファッションの未来を考える(3)
国内アパレル市場における衣類の輸入浸透率は97.7%(2018年)1。つまり、日本で販売されている衣類のうち、日本国内で生産されている衣類は3%に満たない。ここでいう「生産」とは、縫製の工程が日本で行われたことを指すため、生地の生産、さらに綿や羊毛、合成繊維の原材料である石油といった原料まで含めると、日本だけで衣類の生産が完結することはほとんどないと言える。海を越えて、多数の国につながるサプライチェーンの中で、各工程の労働環境の安全性を担保することはいかにして可能になるのだろうか。

「フェアトレード」という言葉が聞かれるようになって久しい。1940年代にNGOによる慈善活動色の強い取り組みとして始まったフェアトレードの運動は、1990年代頃から一般企業も参入することによってビジネス志向を強めてきた。2
並行してビジネスのグローバル化が進み、製品の生産は複数の国をまたいで行われることが一般的になる中で、各工程での労働環境や自然環境への配慮の欠如が問題視されるようになった。
そうした流れの中で、フェアトレード・ラベルをはじめ、第三者が製品の生産過程を確認し、認証する仕組みがつくられたことで、その認証制度を通して市場の取引慣行を是正するためのツールとしても活用されるようになった。
初期のフェアトレード運動における慈善活動的な側面が軸ではなくなっているが、一貫して、グローバル経済システムの中で、経済的・社会的に弱い立場に置かれた人々に過度なしわ寄せがいっていないかという視点を企業や消費者が持ち続けるために、重要なキーワードとして機能している。
2019年に一般社団法人日本フェアトレード・フォーラムが実施した意識行動調査3の結果によると、日本におけるフェアトレードの認知度は32.8%で、前回2015年調査時の20.3%から上昇している。さらに、年代別に見ると10代の認知度は45.9%と約半数にのぼることから、今後ますます生産過程に倫理的・環境的配慮を求める流れが加速することが予想される。