
2007年の海外の展示会デビュー以来、クキアの提案する製品は、日本に伝統的に伝わる木製玩具がもつ、染料がたっぷり塗られ、はっきりとした色味や風合いのものとは一線を画す。クキアのブランド「gg*(ジジ)」も「kiko+(キコ)」も、木目が分かるように薄めに塗られた塗料と、インテリア雑貨店やブティックがこぞって並べたがるほどのデザイン力が特徴だ。
開業当初から、世界供給可能な生産量と品質を確保するため、生産地としてベトナムを選んだクキア。多数ある木材の中でも、おもちゃ作りに適している硬さや艶、密度を考慮し、ヨーロッパのブナの木を中心に素材調達をしている。
現在10人にも満たない、女性だけの企業であるクキア。立ち上げ当初は、若い女性社長ゆえに、「国内外で偏見を持たれ、苦労も多かった」とは社長の羽場和代さんは振り返る。
しかし、デザイナーでもある彼女が手がける製品は、ポップでカラフルで、SNS映えすることも影響し、今では日本だけでなくドイツやフランス、米国や香港など、主要国全てに顧客を持つほど人気が高まった。またエール・フランスをはじめ、企業とのコラボレーション製品も手がけるようになったという。
「これまでプラスチックでしか表現されてこなかったものを木で作る」という発想は、クキア商品の最大の特徴。年間1万点以上売れ続けているというロングセラーの「お絵かきボード」を始め、「おはじき」や「カメラ」など40点以上の製品を輩出している。こうした中で、脱プラ視点でのものづくりはもちろんのこと、SDGsへの取り組みにも力を入れている。
2008年に販売を開始したお絵かきボードも、構造上、絵を描くボード部分はたくさん遊ぶと劣化し、その場合本体ごと廃棄せざるを得なかった。しかし、2019年にデザインを改良し、ボード部分のみ取り替え可能にすることで修理も可能になったためさらに長く愛用してくれる顧客が増えたと話す。さらに製品の梱包材を見直し、紙などの土に返る素材を採用する取り組みを開始した。
木製玩具に触ることから、木の温もりを肌で感じ、長く商品を愛用して欲しいというコンセプトで、クキアが提案するこうしたデザイン性のある玩具は、母親としての視点を大切にしているからこそ生まれた製品が並ぶ。玩具を通じた遊びの中で、当時に自然環境の大切さと地球についての話しに耳を傾ける。そんな習慣を身に付けた子どもなら、環境問題への取り組みを、当たり前のように受け入れるようになるに違いない。