野村総合研究所の調査によると、新型コロナ禍で実質的に失業状態にある非正規雇用者が「女性103万人、男性43万人」に達したことが分かった。生活困窮者の支援を続ける認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の大西連理事長は、「現在の支援制度は長期的な失業を想定しておらず、本来セーフティネットであるはずの生活保護もハードルが高い。当たり前の権利としてだれでも利用できる環境になれば」と話す。(オルタナ副編集長=吉田広子)

――改めて「もやい」の活動について教えてください。
私たち「もやい」は、2001年の設立以来、「日本の貧困問題を社会的に解決する」というミッションのもと、活動を展開してきました。生活困窮者への支援や居場所づくり、政策提言活動などを行っています。
現場での生活困窮者への支援としては、ホームレス状態の人がアパートを借りる際の連帯保証人をのべ2400世帯引き受けたり、ホームレスの人やネットカフェ難民などの生活困窮者からの相談を年間4000件対応したりしています(2020年2月時点)。
2018年には認定NPO法人として全国で初めて宅地建物取引業免許を取得し、高齢や病気や障がい、生活困窮などにより住まいの確保に苦労している人への不動産仲介の事業も始めました。
2020年4月以降、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、緊急の相談体制を設けています
食品配布はコロナ前の4倍に
――年明けに都庁前で行われた食品配布を見学したところ、とても長い列ができていました。若い年代の方もいて、事態の深刻さを感じています。
都庁前では、「新宿ごはんプラス」と共同で食品配布を行っています。2020年4月ころは1日120~180人ほどで、7月以降は落ち着いていたのですが、年明けからまた200人を超えるような状況になりました。2月には約280人、3月に入って過去最多の300人を超えました。
2020年と比べても倍、コロナ前と比べると4倍にもなります。いままで経験したことがない規模です。特に二度目の緊急事態宣言が大きなインパクトを与えたようです。
――どのような相談が多いのでしょうか。
リアルな相談会以外にも、メールや電話、オンライン会議システムなどで相談を受け付けていますが、月の相談件数は500件に上り、コロナ前の1.5倍に増えました。
派遣、契約、日雇いなど非正規雇用だった人たちが仕事を失い、家賃が払えないといった相談が多いです。緊急事態宣言を受けて、イベント関連事業者や飲食店で働いていた人たちからの相談も増えていますね。
この1年の間に、なかなか仕事が決まらず、失業期間が長くなり、貯金を使い切ってしまい、経済的に苦しくなった人も多いようです。20~30代の女性の相談はもともと3割くらいでしたが、いまは全体の4割を占めています。
仕事を見つけることが難しい場合は、生活保護や家賃補助など公的支援の手続きを進めるお手伝いをしています。