国連、ミャンマー軍事政権の暴力非難
2月1日の国軍によるクーデター発生以降、ミャンマーがますます混迷の度を深めています。デモによる死者は240人を超え、多くは頭を銃で撃たれています。子供が15人も含まれており、国連のグテレス事務総長が「残忍な暴力を強く非難する。人権侵害の停止や民主主義への復帰を求め断固とした国際社会の対応が必要だ」と訴えているのも当然でしょう。
ミャンマーは遠い国ですが、今やSNSでボーダレスの時代です。ヤンゴン在住の友人、フリージャーナリストの北角裕樹氏に連絡をとると、「今ちょうど自宅前の道路に国軍と警官がいるから見せましょう」と携帯をかざしてくれました。ゆっくり移動する不気味な軍用トラックとマシンガンやショットガンで武装した兵士が道路を徘徊している生々しい映像に寒気を覚えました。

北角さん自身、デモ取材中に治安当局に一時拘束されたそうです。弾圧の強化により、2月のような大規模な街頭デモは現在は行えなくなっています。夜間デモや地区ごとの100人程度の小規模・分散型デモで短時間、声をあげては撤退することを繰り返しているといいます。
「ちょっと歩けば、デモとそれを鎮圧する軍、警察の部隊に遭遇するが、どうしても必要な取材以外はなるべく家にとどまっている。危険があるし、夜間外出禁止令が出ており、逮捕状なしで検挙が可能。戒厳令と同じような状態」と北角さん。
キーボード・ファイター
情報が規制される中、活躍しているのが、市民記者と呼ばれる人たちです。治安当局によってデモ参加者が逮捕されたり、銃撃される記事を現場の映像とともにフェイスブックにアップ、ミャンマーから世界に向けて情報を発信しています。各国のメディアにとっては重要な情報源になっています。パソコンに詳しい人は、さらにまとまった情報をBBCなどマスメディアや各国大使館へ提供しています。そういう人たちは「キーボード・ファイター」とか「キーボード・ウォリアー(戦士)」と呼ばれ、頼りにされているとのことです。
「過去のクーデターや軍の弾圧の時代にはSNSがなかった。今、われわれには新しい通信手段を手に入れており、軍の不当な弾圧を直ちに世界に知らせられる。今回は勝てる」と市民は強気になっています。
一方で、軍の暴力の前では、自分たちの力の限界を自覚しています。本当の解決には国際社会の助けが必要なのに、その動きがあまりにも弱い。国連安保理でも制裁決議が通らない。「なぜ助けてくれないのか」という不満の声も出始めています。