都内の大学に通う学生有志はこのほど、入学しない大学に入学金を支払っている現状を問題視して、オンライン署名を立ち上げた。学生たちの調べによると、都内の私大の一般的な入試方法の4割が入学金の納付期限が2月中であり、3月に合格発表がある国公立などが第一志望の場合、行くか行かないかに関わらず、30万円程度の入学金を支払わないといけない状況にあるという。署名の提出先は文科省、各党の党首、私大が加盟する団体などで、現在までに約3万人からの署名が集まっている。(オルタナS編集長=池田 真隆)

この署名活動は、入学金の納付期限に問題意識を持ったある一人の学生から生まれた。その学生の友人の妹が、今年大学受験を控えていた。第一志望の合格発表は3月末であり、滑り止めで受けていた大学の入学金の納付期限が2月末だった。入学金を期日までに振り込まないと、入学する権利を失うのだが、その高校生は行くか分からない大学の入学金を親に支払ってもらうことに強い抵抗感を持っていた。
この話を聞いた大学生は、行かなくてもいい大学に入学金を支払うことを問題視して、署名を立ち上げた。この問題意識に共感した学生がSNSなどで集まり、有志の学生は10人ほど集まった。
署名を立ち上げるにあたり、調査を行った。都内の私大を学部別に入学金の納付期限を調べた。その結果、42%が2月末であることが分かった。さらに、実質的に国公立大学の合格発表を待つまでに、滑り止めで受けた私大の入学金を支払わないで済むことが難しい事実も分かった。
最も遅い国公立大学前期日程の合格発表日は3月10日だが、その日までに入学金の納付を求める大学は68%で、後期日程になるとその割合は91%にも及ぶ。つまり、3月に合格か不合格か分かる国公立大学などを第一志望にする受験生にとっては、安心して受験に挑むために経済的な負担がのしかかる。
医学部では入学金だけで200万円掛かるところもあるが、多くの私大の入学金は30万円は掛かる。コロナによって収入が減った家庭にとって、行くか行かないか分からない大学に30万円支払うのは痛い出費だ。
オンライン署名では、「大学」と「国」にそれぞれ要望を訴えている。大学には、入学金の納付期限を3月末にすることなどを訴え、国には、「入学しない学生からの入学金」なしでも大学が経営できるような支援を求めた。
署名を立ち上げたメンバーは、「この状況を改善しないと、格差が広がりつづける。入学しない大学に入学金を支払うのはおかしい」と述べた。