■セブン&アイ・ホールディングス 伊藤順朗・常務インタビュー■
セブン&アイ・ホールディングスが「脱炭素」に向けて大きく舵を切った。2020年には、「50年までにCO2排出量実質ゼロ」や事業活動の100%再エネ化を矢継ぎ早に打ち出した。10年来サステナビリティ戦略に携わる、伊藤順朗・取締役常務執行役員に話を聞いた。(聞き手・森 摂=オルタナ編集長、副編集長=吉田 広子、撮影・川畑 嘉文)

■店舗の脱炭素化、省エネと再エネで
─環境目標を「2050年までにCO2排出量80%削減」から「実質ゼロ」に変更されました。社内ではどのような議論があったのですか。
政府が「実質ゼロ」を宣言し、歩調を合わせることが大切だと考えました。ただ、80%削減にし、実質ゼロにしろ、気候変動対策には長年取り組んできましたので、経験値はありました。
2019年5月に発表した環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」では、「CO2排出量削減」「プラスチック対策」「食品ロス・リサイクル対策」「持続可能な調達」の4分野で、2030年目標と2050年目標を掲げています。
こうした中長期の数値目標を掲げることに、社内でも議論がありました。30年後には私たち経営陣は会社にいないでしょうから、先のことにコミットして良いのだろうか。それでも、議論を重ねるなかで、やはり社会的なインパクトを考えて、最終的に2050年という長期目標を掲げることにしました。
自分たちができていることだけを発信するのではなく、これから目指すべき姿を打ち出していく必要性も感じました。ただし、絵に描いた餅にならないように、同時に「2030年目標」も設定しました。CO2削減に関しては、グループの店舗運営に伴う排出量30%削減(2013年度比)を目指し、今のところ達成できる見込みです。
─その後20年間で70%を削減していくのですね。この5年で1千億円を投じるそうですが、具体的にはどういう内訳でしょうか。
当グループのCO2の大半は店舗から排出されています。特にセブン-イレブンは国内に約2万1千店舗ありますので、冷蔵設備からの排出が占める割合が大きいです。
これまでも省エネ冷蔵設備の入れ替えなど環境投資を行ってきましたが、店舗に太陽光パネルを設置するなど、脱炭素に向けた施策をグループ各社で進めていきます。
電力販売契約(PPA)モデルの導入も検討しています。PPAは、発電事業者に大規模な太陽光発電所をつくってもらい、10─20年間程度の契約で、私たちが電力を買い取る仕組みです。どうしても削減が難しい部分は、森林減少・劣化の抑制による排出削減の二国間クレジット「REDD+(レッドプラス)」の取得も計画しています。
■「CSR監査」で人権リスク回避
─ESG(環境・社会・ガバナンス)に関して株主との対話は増えていますか。