漁船に乗った漁師たちが釣ざおで豪快に一匹ずつ釣り上げる「カツオの一本釣り」は、日本の伝統漁業の1つだ。持続可能な漁業の証である「MSC認証」を取得するケースも出ている。だが市場では安い韓国産などのカツオに押されているという。復活の決め手は、小売業や消費者の理解と支援だ。
■苦境に立たされる伝統漁法「カツオの一本釣り」

カツオが水面から舞い上がるように1匹ずつ釣り上げる一本釣り漁法は「土佐の一本釣り」(田中好子主演、1980年)という映画にもなったほど全国に知られている。これも有名な「カツオのタタキ」は一本釣りでないと、とこだわる人もいる。
実は漁業資源に対してやさしい漁法でもある。一網打尽にしてしまう「巻き網」などの漁法では、幼魚なども獲ってしまう混獲や乱獲の心配があるからだ。一本釣り漁法では、目的以外の魚を傷つけずに海に帰すなど、生態系への影響を最小限に抑えている。
しかし、韓国や日本の効率良く大量に獲る巻き網漁に押され、一本釣りは全国的に縮小傾向にある。この30年で、刺身用の冷凍カツオ漁船は100隻から25隻に、近海の生カツオ漁船は300隻から70隻に減ってしまった。
■持続可能な漁業を証明するエコラベル
漁法の偽装には罰則が存在しない。伝統的な一本釣りカツオを販売してきた土佐鰹水産(高知県黒潮町)の明神宏幸社長は、正真正銘の一本釣りであることを示すため、2009年11月に国際的な海のエコラベル「MSC認証」を取得した。今年12月13日には国内の漁業認証「マリン・エコラベル」も取得した。
一本釣りの小売単価は100グラム当たり180円前後、巻き網の小売単価(同)は100円前後である。安価なカツオに押される土佐の一本釣りカツオの状況は、認証取得後も依然として厳しいという。しかし同社は地道に販路を開拓しており、今年12月1日には、コープ製品に真空パックの「CO・OP 一本釣り 藁(わら)焼きかつおたたきスライス」が加わった。