原田勝広の視点焦点
■人権NGOが日本企業に撤退求む
国際人権NGOのヒューマンライツ・ナウ、ヒューマン・ライツ・ウォッチなど人権擁護の5団体がこのほど都内で記者会見を行い、ミャンマーで都市開発事業を進めている日本企業に撤退を求める共同声明を発表しました。日本の企業はかねてより人権意識が低いと批判されてきましたが、ESG、SDGsブームの中で人権問題を厳しく問う声が出てきたことは高く評価できます。

中国の新疆ウイグル自治区で強制労働により生産された綿製品の取引に日本企業も関わっているのではないかと問題になっていますが、ミャンマーの場合は平和裏にデモを展開していた民衆に国軍が銃を向けるというあからさまな民主主義弾圧、人権侵害だけに軍事政権下でビジネスに関わる日本企業と日本政府は官民で人権外交を展開するよい機会と言えます。
問題になっているのは、2020年、ヤンゴンに竣工予定(現在は工事中断)の「Yコンプレックス」事業。商業スペース、オフィス、ホテルなどが入居する複合施設を建設・運営します。日本企業の海外インフラ市場への参入促進のために設立された官民ファンド、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)や準ゼネコンのフジタ、東京建物、ホテルオークラなどが参加、国際協力銀行(JBIC)、三井住友銀行、みずほ銀行が融資しています。問題は敷地が国防省所有の旧軍事博物館跡地であること。年間2億円の賃借料が国軍に流れる可能性があるというわけです。
日本側は、クーデター前、この賃料は国防省、つまり民政移管したミャンマー政府に支払われるとの認識ともいわれますが、憲法上国防省は国軍の支配下にあり、政府ではなく国軍の資金になると懸念されています。