自転車通勤・通学で「脱炭素」ーー。パリと近郊の131自治体からなる公施設法人「メトロポール・デュ・グラン・パリ(MGP)」が7月8日、自転車道8ルートの建設計画を発表した。6000万ユーロ(78億円)を投入し、全長200kmの自転車専用道でパリと郊外を結ぶ。2024年までに移動の10%を自転車に変え、2030年までに自転車移動を現在の3倍に増やす。(在パリ編集委員=羽生のり子)

MGPは、法的には「コミューン間協力公施設団体(EPCI)」と定義される自治体間連合で2014年に設立された。パリに隣接する4県とその外側を取り囲む3県の住民720万人が活動の対象となる。活動は5分野にわたる。
(1)健康と食の安全、(2)経済と地域文化、(3)エコロジー移行と環境負荷の少ない移動、(4)住宅と住民格差解消、(5)デジタルトランスフォーメーションとデジタル格差解消だ。
自転車道整備は(3)に含まれる。2050年までに通勤・通学の50%以上を公共交通機関、自転車、徒歩にするのが長期的目標だ。
混み合う首都圏高速鉄道(RER)を避けて自転車で通えるよう、RERの路線に沿った自転車道も整備する。
パトリック・オリヴィエMGP会長は、「首都圏で3km以内の移動の50%に自家用車が使われている。これを自転車にしたい」と、7月8日の記者会見で説明した。
自転車道は(1)から(8)までの8ルートがあり、(1)から順に整備する。

パリと郊外を結ぶ路線、郊外からパリを通り別の郊外に抜ける路線、パリを通らず郊外と郊外を結ぶ路線の3種類がある。ルートの通り道となる65の自治体は、いずれも整備に賛成した。
パリと郊外にある41の自転車利用者団体の集合体「イル・ド・フランス自転車連合」(加盟者数4000人)も、利用者の観点からこの計画に関わった。
自転車だけの道路ができるわけではなく、車道の一部が自転車専用に整備される。
パリとその近郊に最近できた自転車道を見ると、車道の脇に添え物的に作るのではなく、車道の一部を潰して自転車道にし、自転車の存在感を高める方向で作られている。
パリとその近郊には、公営の貸し自転車「ヴェリブ」があり、ヴェリブ専用駐車場もある。
自家用自転車も増えているが、都会の集合住宅には専用の駐車場がなく、路上に置いた自転車の盗難が問題になっている。
利用者が増えるにつれ、どの自治体でも集合住宅でも、自転車専用駐車場の整備が大きな課題になるだろう。