国際自然保護連合(IUCN)は9月、仏マルセイユで「世界自然保護会議」を開いた。4年に1度だけ開催する、「生物多様性」にまつわる世界最大級の会議体だ。最終日には「気候変動と生物の多様性の危機は根源が同じであり、この2つを切り離した対策はありえない」と決議した。その内容は11月に英国で開く気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)にも影響を与えそうだ。(パリ編集委員 羽生のり子)

IUCNは1948年創立の国際NGOで、政府団体、NGOなど1400の団体が会員だ。9月3日から11日までの会期の前半は「自然保護フォーラム」で公開討論の場、後半は会員総会で、137件の動議を採択した。その他、一般市民が参加できる展示会場もあった。6000人がマルセイユに集い、3500人がオンラインで参加した。展示会場には市民25000人が訪れた。
フランスでイルカの大量死が問題に
総会では、2025年までに少なくともアマゾンの80%を保護する動議を全会一致で採択した。また、地域と連帯して海洋の哺乳類保護を強化する動議も会員の賛成多数で採択した。漁の季節制限や船舶の速度低減が具体策だ。議長国フランスでは、数年前から大西洋岸でイルカの大量死が問題になっていた。冬の数カ月間でイルカの死骸が1000頭以上打ち上げられる年が続いている。

最終日に発表した「マルセイユのマニフェスト」でIUCN は、「人間は自然の一部。気候変動対策のためにさらに自然を破壊してはいけない」と、気候変動対策と自然保護が一体であるべきだと主張した。経済についても、「今のシステムは機能していない」と全面的に否定し、自然に基づいた経済再生計画を立て、経済再生予算の10%を自然の保護と修復に当てるべきだと、各国政府に厳しい注文をつけた。
IUCNの決議に法的効力はないが、採択した動議とマニフェストは、11月に英国グラスゴーで開催される気候変動のCOP26と、来春中国の昆明で開催される生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)に大きな影響を与える。