国際人権団体の英アムネスティ・インターナショナルは10月25日、年内に支部を置く香港から撤退することを発表した。同団体が公表した資料によると、香港国家安全維持法(国安法)による「報復」の恐れがあり、自由に活動を続けることができなくなったことを理由として挙げている。国安法によって解散を余儀なくされた市民団体は最低でも35に及び、市民社会の抑圧が強まっている。(オルタナS編集長=池田 真隆)

国安法は中国が2020年6月に香港で導入した法律だ。弁護士などの専門家は、「香港の法制度を根本から覆すことになる」と警鐘を鳴らしていた。
そう強調する理由はこうだ。同法では、中国の保安担当者が香港で合法的に活動することを認めている。複数の行為を犯罪とすることができ、その行為を行った場合、最高で無期懲役を科す。
専門家が指摘したもう一つの課題は、同法が定める刑事規定の表現が曖昧なところだ。曖昧であるがゆえに、NGOは当局に活動の目的を誤った解釈でとらえられてしまう危険性がある。アムネスティ・インターナショナルは、「包括的で曖昧な定義は、人権を制限する口実として、恣意的に使われてきた」と声明を出した。
国際的に存在感のある団体の香港からの撤退を受けて、人権問題に詳しい弁護士の佐藤暁子氏は、「市民社会の抑圧が高まった」と話す。「アムネスティ・インターナショナルが熟議した上での決断なので尊重するが、一方で、これほどまでに切迫した状況だと分かった。比較的に安全な土地にいる個人や団体が声を挙げ続けないといけない」。