内閣総理大臣 岸田文雄様
拝啓
英グラスゴーで開催中のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)での演説をお聞きしました。残念ながら、日本は環境NGOから「化石賞」を受けてしまいました。石炭火力発電からどうしても脱却できないニュアンスが伝わったからのようです。どうすれば化石賞を返上できるのか、3つのポイントを考えてみました。(オルタナ編集長・森 摂)

■「ガラパゴス化」の道を歩むアンモニア
11月4日(現地時間)、46ヵ国が石炭火力発電の廃止、新規建設停止に同意した一方で、日本は同意しませんでした。
日本は、どうすれば化石賞を返上できるのでしょうか。
第一に、石炭とアンモニアです。首相は演説で「化石火力をアンモニア・水素などのゼロエミ火力に転換するため、1億ドル規模の先導的な事業を展開する」と強調しました。
しかし、アンモニアはオルタナ本誌64号の第一特集「グリーンな脱炭素 グレーな脱炭素」で詳述した通り、「燃焼時にCO2は出ない」との触れ込みとは裏腹に、いまのところ石炭との混焼が前提です。
ここに国際社会からアンモニアが評価されない理由があります。しかも、褐炭から取り出した水素からアンモニアを生産すると、製造時にCO2が出るのです。
さらには11月4日、COP26において46ヵ国が石炭火力発電の廃止や新規建設停止に同意した一方で、日本は中国、インド、米国、オーストラリアなどとともに同意しませんでした。
そもそも、アンモニアの製造コストは到底、採算に合わないものです。しかもアンモニアを輸入すると、エネルギー自給率が下がります。自給率を高めることがエネルギー安全保障において重要なはずなのに、輸入を増やして良いのでしょうか。今後のエネルギー戦略は、「自給自足」が基本です。
COP26での議論を聞く限り、アンモニア戦略は、国際社会において「ガラパゴス化」しつつあります。そこに113億円の資金を注ぎ込むのであれば、その分、国営のソーラーパネルや地熱発電所を国有地に設置して、国の借金を返す方が生産的です。
これだけ政府が力を入れると言っているアンモニアですが、10月に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」では、2030年におけるアンモニア・水素の割合は1%と少ないことも不思議です。アンモニア戦略は見直されるのが良いでしょう。
■カーボンニュートラルの本丸は「炭素税」