ここ数カ月、サステナビリティの情報開示基準について大きな変化がありました。日本企業にとってESG情報発信の重要性が増すなか、サステナビリティ担当者は十分な理解が重要です。そこで最近の流れを整理しました。なお、この記事は「CSR検定2級公式テキスト2022年版」(2021年12月発行予定)にも掲載します。(オルタナ編集長・森 摂)
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■IIRCとSASBが合併しVRFに:そのVRFも統合
サステナビリティ情報(ESG)の開示においては近年、国際統合報告評議会(IIRC)やサステナビリティ会計基準審議会(SASB)など、さまざまな基準が生まれた。

IIRCはロンドンに本部を置き、統合報告の原則をまとめた「国際統合報告フレームワーク」策定機関として存在感を高めていた。一方、SASBは米国発祥で、「SASBスタンダード」として財務インパクトが高いと想定されるESG要素に焦点を当て、11セクター77業種についてのサステナビリティ関連指標の開示を促してきた。
そのIIRCとSASBが2021年6月に統合し、価値創造財団(VRF)として発足した。さらには、そのVRFをも飲み込む形で、国際財務報告基準(IFRS=イファース)の運営財団が2021年11月3日、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の立ち上げを発表した(実際の統合は22年6月)。
ISSBは、VRFや気候開示標準評議会(CDSB)と組織統合した上で、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)やカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)、世界経済フォーラム(WEF)などとも連携を進める。
■ISSBへの統合で「非財務情報」の重要性示す
IFRS財団が主導したISSB発足の背景には、非財務情報に関する企業報告の基準が多く存在するなかで、基準統一を進めるとともに、非財務情報の重要性を企業にも投資家にも理解してもらいたいという強い意志が見て取れる。
ISSBは2022年6月までに組織統合を完了し、「投資家のニーズを満たす高品質なサステナビリティ関連報告の基となる、包括的なグローバルベースラインの策定」、「気候関連と一般的な報告基準に関するプロトタイプ(原型)の策定」などに取り組む。
■「ステークホルダー資本主義」に向けた指標も