2020年10月の菅義偉首相(当時)による「2050年カーボンニュートラル」宣言を受けて、日本は脱炭素に向けて大きく舵を切った。その根幹政策は「炭素税」と「排出量取引」など「カーボンプライシング」だ。「温室効果ガス46%減」を掲げた「2030年」まであと9年しかないが、その行方は「五里霧中」だ。(オルタナS編集長=池田 真隆)

「まだ入口の入口に過ぎない」─。環境省でカーボンプライシングを担当する環境経済課の安田將人・課長補佐は12月2日、こう表現した。まさにこの日、与党の税制調査会がカーボンプライシングを初めて議論の俎上に載せた。
日本政府は2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、あらゆる政策を総動員して挑む。環境省は今夏、その「あらゆる政策」の柱の一つに「カーボンプライシング」を入れるよう税制改正要望を出した。
ここで重要なのが、あくまで「カーボンプライシング」と表記したことだ。カーボンプライシングは、二酸化炭素の排出量に応じて課税する「炭素税」と排出量を売買する「排出量取引制度」に大別されるが、炭素含有量を輸入した製品の価格に反映する国境調整措置(国境炭素税)、途上国と協力して削減の成果を分け合うJCM(二国間クレジット)などもある。
つまり、「炭素税」に決め打ちして、導入を求めた訳ではない。安田課長補佐の「入口の入口」とはそういう意味から出た言葉である。

■検討会は35回、いまだ解見えず