
「イラク戦争とは何だったのか?」――米国や英国などが大量破壊兵器の存在を口実に侵攻した2003年のイラク戦争では、最終的に大量破壊兵器は見つからず、開戦の正当性が問われている。英国では当時のブレア元首相がイラク戦争の検証を行う独立調査委員会の喚問を受け、イラク戦争を支持したオランダで昨年1月に「イラク戦争は違法」との判断が下された。日本でも検証を求める国会議員連盟が昨年末に発足するなど、検証の動きが本格化している。
■国際法を無視して開戦?
イラク戦争は03年3月、米英が中心となってイラクに侵攻して始まった。正規軍同士の衝突は短期間で終わったものの、米英などの占領軍と武装勢力との間で泥沼のゲリラ戦にもつれこみ、イラク国民にWHOの発表で15万、米国のジョンズ・ホプキンス大の調査で65万5千もの犠牲者を出し、しかも6人に1人が国外に逃れるという甚大な被害をもたらした。正式な戦闘終結がオバマ大統領により宣言されたのは2010年8月だ。
しかし開戦理由とされた大量破壊兵器の存在は、04年10月に米調査団の「存在しない」との最終報告で否定されている。今回参戦した英国では、なぜ米国に追従したのかを解明するため、09年7月にブラウン前首相の指示により独立検証委員会が設置された。
先月21日に開かれたブレア元首相への検証委員会の再喚問では、当時の政府で最高法律顧問を務めたゴールドスミス氏が「国連安保理の既存の決議では、国際法上、開戦を正当化できない」と助言したにもかかわらず、元首相が「暫定的な見解に過ぎない」として重視しなかったことが明らかにされた。
検証委員会は英国内だけでなく、米国で当事者らと会談したほか、昨年秋には二度にわたりイラクを訪問。現地での情報収集を重ねた。検証の最終報告は今年初頭にも公表の見込みだ。
■日本は政財こぞって戦争支持

開戦当時、自衛隊を派遣し、約30兆円もの米国債を購入して米国を支援した日本にとっても、検証の動きは他人事ではない。当時、小泉元首相は「アメリカの武力行使を理解し、支持する」と表明し、同様に日本経団連の奥田碩元会長もイラク戦争の戦費や復興資金について「要望があれば日本は出すべき」と語ったが、そうした戦争協力への責任は今日まで明確にされていない。
検証を求める国会議員連盟は、今月中にも政府に提案を行うべく準備中だ。ジャーナリストで「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」の志葉玲・事務局長は「検証を通じて、戦争への協力がしにくい土壌を作ることが重要」と話している。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年2月10日