国際環境NGOの「バンクトラック」はこのほど、先進国の金融機関がアフリカの化石燃料プロジェクト(石油・ガス採掘、石炭火力など)に少なくとも15兆円の資金を提供しているとする報告書を発表。うち10%強が日本の金融機関によるもので、すでに批判を集めているアジア地域の石炭火力支援のみならず、アフリカ地域においても再エネへの公正な移行を妨げている実態を明らかにした。(オルタナ編集部・長濱慎)

■JBICや三大メガバンクが1兆6千億円以上を融資
バンクトラックはオランダに本部を置き、金融機関の環境・社会行動を監視している。今回の報告書「公正な移行のロックアウト アフリカにおける化石燃料融資」は、ウガンダ、コンゴ、ガーナなどアフリカのNGO19団体と共同でまとめたものだ。
同報告書によると、アフリカでは2016年から21年6月までの間に、964の化石燃料プロジェクトが進行していた。うち金融情報にアクセスできる58の大規模プロジェクトについて調べたところ、先進国の金融機関が少なくとも1323億米ドル(約15兆2145億円)の融資と引受を行なったことが明らかになった。
このうち約143億米ドル(約1兆6445億円)が日本の金融機関によるもので、融資額は以下の通りだった(単位は100万米ドル)。
〈プロジェクトファイナンス〉
・国際協力銀行(JBIC):4,673
・三井住友フィナンシャルグループ:1,733
・みずほフィナンシャルグループ:1,058
・三菱UFJフィナンシャル・グループ:956
・日本政策投資銀行:466
・三井住友トラスト・ホールディングス:307
・新生銀行:50
〈コーポレートファイナンス(一般事業資金)〉
・三井住友フィナンシャルグループ:2,015
・みずほフィナンシャルグループ:1,590
・三菱UFJフィナンシャル・グループ:1,413
・三井住友トラスト・ホールディングス:30
全体で見ると、融資額1位は中国開発銀行(約81億米ドル)で、米JPモルガン・チェース(62,6億米ドル)、中国輸出入銀行(62,4億米ドル)、英スタンダードチャータード銀行(57,6億米ドル)、英バークレイズ(53,4億米ドル)が続く。日本の金融機関でもっとも多いJBICは9位、三井住友フィナンシャルグループは11位となった。
報告書はアフリカ大陸に世界の再エネ開発ポテンシャルの39%があるにもかかわらず、中東と合わせても投資は2%に過ぎないと指摘。「それどころか、金融機関はこの地域の化石燃料産業に多額の資金を提供し続け、人々が必要とする安価でクリーンな再エネの可能性を無視し、公正な移行を阻害している」と批判する。
今回の報告書作成には国際環境NOG350アフリカも参加しており、350.org Japanの渡辺瑛莉シニア・キャンペーナーは、こう指摘する。
「近年、三大メガバンクは新規石炭事業には融資しない方針を掲げたが、看過できない抜け穴を残したまま。ガス・石炭については厳格なルールがなく、今も巨額の支援が続けられ、世界の気候の安定とアフリカの人々の人権をリスクにさらしている」