■アデコグループ・小杉山浩太朗・SDGs総合責任者インタビュー
■記事のポイント
①アデコグループジャパンは、SDGsを根幹にした中期経営計画に取り組んでいる
②人財の紹介・派遣にとどまらず、顧客企業の経営アドバイザリーを行うケースも
③SDGs責任者の小杉山浩太朗氏は、課題解決を通した社会変革企業を目指すと話す
総合人財サービス企業のアデコグループジャパンは2021年1月から、SDGs(持続可能な開発目標)を根幹に据えた中期経営計画を進めている。25歳で計画をリードする小杉山浩太朗・SDGs総合責任者は「社会課題の解決を通して業績を最大化する『社会変革企業』を目指したい」と、意気込みを語る。(オルタナ副編集長・長濱慎)

■小杉山浩太朗(こすぎやま・こうたろう)1997年生まれ。2014年からユナイテッドワールドカレッジ(UWC)カナダ校、2016年からニューヨーク大学で学ぶ。2019年には世界のユースリーダー代表として国連本部で各国大使とのパネルに参加。2020年アデコグループジャパン入社。SDGs責任者として活動する傍ら、サステナブル経営のコンサルティングや研修も行う。
■「公正な移行」実現へ国内30万人のキャリア支援を目指す
――SDGsを根幹に据えた中期経営計画とは、どんな取り組みなのでしょうか。
「人財躍動化を通じて、社会を変える」というビジョンのもと、2021年1月から25年までの5ヵ年計画で取り組んでいます。特に人財サービス企業として、SDGs目標8の「働きがいのある人間らしい仕事」を一人ひとりが実現するためのサポートに力を注いでいます。
アデコグループ(本部・スイス)は世界全体で、2030年までに求職者500万人にリスキリングやアップスキリングを行う目標を掲げています。日本でも、2025年までに30万人に、より働きがいのある仕事に就くための教育を行うことを目指しています。
例えば、気候変動へのインパクトが重たい産業で働く人が軽い産業へ転職できるよう、必要な知識やスキルを身につけるためのサポートをします。これは「誰一人取り残さない」という、SDGsの理念につながるものだと思います。
ちなみにアデコグループは、「人材」でなく「人財」と表記します。そこには一人ひとりが社会にとって大切な「財産」であるという意味を込めています。
――中期経営計画を進めるにあたり、具体的にどんなことに取り組んでいますか。
まずは社員のSDGsに対する理解度を高めてボトムレベルを上げるため、社内ワークショップを行いました。「SDGsダイアログ」と称して、2021年の1年間で2500名の社員と対話を行い、SDGsが日々の業務とどうつながっているか理解を深めてもらいました。
さらに社内浸透を図るため「SDGsアンバサダー」という有志を募ったところ、20名が手を挙げてくれました。この20名が自分の部署に戻ってそれぞれアンバサダーを任命して、現在は150名を超える社員がアンバサダーとして活動しています。
■紹介・派遣業から経営アドバイザリーを行うパートナーへ
――1年かけて、2500名の社員と対話したのですね。
一人ずつとの対話はさすがに大変なので、営業、経営戦略、人事、広報など部署ごとに集まってもらいダイアログを行いました。目標を共にしているチームごとで対話を行うことで、ある程度テーマを絞れると考えたのです。
その上でSDGsを仕事上の体験と結びつけて「自分ごと」と感じてもらう工夫をしました。例えば営業では「人財の派遣ありきでなく、お客さま企業の課題解決を考えたら上手くいった」など、SDGs的なアプローチをしたら良い結果につながったたという事例は意外にあるものです。
ダイアログが終わった21年末に行った社内アンケートでは、約4割の社員から「働くモチベーションが変わった」という回答が得られました。
「日々の仕事を求職者に仕事を紹介するタスクとしてこなすのでなく、その人の人生がどう変わるかも考えるようになった」、「仕事の意義をより鮮明に理解できるようになった」といった声が寄せられるなど、1年目でここまで大きな意識変革が起きたのは私自身も驚いています。
――社員の意識が変わったことで、取引先との関係に変化はありましたか。