「エシカルコスメで社会にインパクトを」21歳環境活動家

■環境活動家・露木しいな再エネ電力イベントで語る

■記事のポイント
①露木しいなさんは環境活動家を名乗り、大学を休学し講演活動を行う21歳
②バリ島のグリーンスクールやCOPに出席した経験を元に気候変動について語る
③社会システムの変革に貢献できるよう、コスメビジネスの立ち上げも目指す

露木しいなさんは大学を休学し、主に小学生から高校生までを対象に気候変動の講演を行っている。肌の弱い妹のために自然素材かつアニマルウェルフェアに配慮した口紅を開発し、コスメビジネスの立ち上げも目指す。8月27日に行われた生活クラブ連合会のイベントでは「環境活動家」を名乗り1人で活動する原動力や、今後の展望などを語った。(オルタナ副編集長・長濱慎)

生活クラブの講演で、41名の参加者にバリ・グリーンスクールの様子を話す(多摩南生活クラブ・多摩総合センターで)

■露木しいな(つゆき・しいな)2001年生まれ。高校3年間をインドネシアの「グリーンスクール・バリ」で過ごし、2019年6月卒業。2018年にCOP24(気候変動枠組条約締約国会議)、19年にCOP25に参加。2019年9月、慶應義塾大学環境情報学部入学。現在は気候変動についての講演会を行うため休学中。

■全国180校・3万人以上の児童・生徒に講演

露木さんはこの2年間で北海道から石垣島まで180校以上を回り、3万人以上の児童・生徒に講演を行ってきた。8月27日には「生活クラブでんきの連続講座2022」に招かれ、講演を行った。同イベントは、再エネ電力の普及を目指す生活協同組合である「生活クラブ連合会」が主催した。

高校3年間、インドネシア・バリ島の「グリーンスクール」に留学

生まれも育ちも横浜ですが、子どもの頃から木登りが大好きだったり、土日に家族でキャンプに出かけたりして自然と親しんでいました。グリーンスクールは「世界最先端のエコスクール」と言われるインターナショナルスクールで、校舎が藁と竹でできているんです。

授業はもちろんですが、日々の暮らしの中でも環境のことを考える機会がたくさんありました。例えば食事にはバナナの葉から作った皿を使い、終わったら土に還すことで食器を洗う水を節約するといった工夫をしていました。

世界中から集まってきたクラスメートは、皆が「自分の行動が社会を変えられる」と信じていました。彼ら彼女らと一緒に学ぶことで「行動するには大人になるまで待たなくていい」と確信できたことは、大きな収穫です。

2018年にはCOP24(第24回気候変動枠組条約締約国会議)に参加して、目の前でグレタ・トゥーンベリンさんのスピーチを聞きました。「行動したら希望は付いてくる。まずは行動しよう」という言葉にピンと来て、現在の活動につながっています。

■2020年9月から大学を休学して、講演活動で各地の学校を巡る

休学に不安がなかったわけではありませんが「やれば何とかなる」と(笑)。楽観的な気持ちは大切ですね。そこまでして行動しようと思ったのは、日本では環境問題への関心が海外ほど高くないことに危機感を持ったからです。

私はよく「行動の格差は情報の格差から来る」と話しています。何が起こっているのかを知る機会がなければ、行動は起こせません。だからこそ、これからを担う世代に自分が見たこと・学んだことを知らせなければと思ったんです。

実際に講演を行った小学校では、給食でプラスチックのストローを使うのをやめようと、学校に生えている笹の葉でストローを作った男の子がいます。知ってもらうことは、本当に大切なんだと実感しています。

最近は人に伝えるのと同時に、私自身もまだまだ学ばなければならないと思い、講演の傍ら、フードロス削減やリサイクルに取り組む企業の見学にも出かけています。

■コスメビジネスを通して社会のシステムチェンジにも挑戦したい

講演の終了後、オルタナ編集部はこれから立ち上げようとしているコスメビジネスの目指す方向性を聞いた。

――精力的に活動していますが、マネジメントは一人でなさっているのですか。

講演のスケジューリングなどは、全て自分で行っています。仲間はいた方が良いと思うのですが、現在は団体に属さず一人で活動しています。

ただし、これから本格化させたいと思っているコスメビジネスについては、デザイナーさんやカメラマンさんなどクリエイターの皆さんに手伝っていただいています。なぜコスメかというと妹の肌が弱く、安心して使ってもらえる口紅を作りたいと、グリーンスクールで3年かけて開発したのが始まりです。

こうして竹の容器、クルエルティフリー(動物実験を行わない)、動物性原料は一才使わない自然素材の口紅が出来上がりました。23年4月のリリースを目指して、準備を進めています。

私のインスタグラムのフォロワーはエシカル消費に関心が高かったり、お子さまができたことで環境問題に関心を持つようになったりした20代後半から30代前半の方が多いんです。こうした皆さまに選んでいただけると嬉しいですね。


一人ひとりが行動すると同時に、社会のシステムを変えることも大切と語る

――コスメビジネスを通して、どんなことを実現したいですか。

社会を変えるには一人ひとりが行動することと同時に、政治や企業といった社会のシステムを変えることも大切です。いくら消費者のエシカルな意識が高まっても、その希望に応える商品がなければ選ぶことができません。

その選択肢を作れるのが唯一、企業です。「新しい価値を提供する」というのはおこがましいかもしれませんが、資本主義の中から変えていくチャレンジもしたいですね。

理想は稼げば稼ぐほど、社会に良いインパクトを生み出せるようになれることです。少しでも多くの利益を社会に還元することを目指して、これからはビジネス脳を鍛えることも必要でしょう。

講演先で話していると、社会を良くしたいというピュアな気持ちを持っている児童や生徒さんが本当に多いなと感じます。2030年や2050年はこうした世代の声が反映される社会になるよう、その土台を作っていきたいなと思っています。

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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キーワード: #サステナビリティ

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