オルタナ総研統合報告書レビュー(18):味の素

味の素グループASVレポート2022統合報告書「社長メッセージ」において、藤江太郎新社長は、社長就任の思いと決意を、「ASV経営の進化、「志×熱×磨」の追求、経営の「スピードアップ×スケールアップ」(エス・バイ・エス)を目指す」と語っています。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

味の素グループASVレポート2022統合報告書

「社長メッセージ」では次の様に述べられています。

1.ASV経営の進化、「志×熱×磨」の追求、経営の「スピードアップ×スケールアップ」(エス・バイ・エス)を目指す。

 西井孝明前社長が取り組んで来たASV(Ajinomoto Group Shared Value:創業以来一貫した、事業を通じて社会価値と経済価値を共創する取り組み)経営と、「志」である「アミノ酸のはたらきで食と健康の課題解決」、この「志」に対する従業員の「熱意」、更には実力、能力を「磨き」続けること大切にし、味の素グループの「企業価値」を飛躍的に高めていく。

2.「企業価値」を「財務価値」と「無形資産による創出将来価値」と捉え、味の素グループの最大の課題である成長力の回復に挑戦する。
 
「成長率」は、事業モデル変革、イノベーション創出、人財資産強化、技術資産強化、ブランド価値向上等に向けて、デジタル技術を活用して取り組む。

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3.企業文化の変革で「スピードアップ」を進める。

経営会議を、事実やデータに基づく「ガチンコ」(率直かつ真剣な)議論 を「トコトン」行う場にして、執行のさらなるスピードアップを図る。

適切なトップダウンとボトムアップのハイブリッド型で変革を進め、自発型かつスピード重視の企業文化に進化させる。

食品とアミノサイエンス、地域、ジェンダー、キャリア等を融合するダイバーシティ&インクルージョンの考え方のもと、イノベーションをスピードアップする。

4.組織資産、人財資産、技術資産、顧客資産の投資を進める。

「スピードアップ」にも「スケールアップ」にも重要なのは、無形資産である。

「組織資産」 は、ビジョン、ASV経営、コーポレートブランド、ガバナンスをはじめとする経営の仕組みである。

「技術資産」は、「アミノ酸のはたらき」を徹底的に追求した研究開発から生産、事業まで、イノベーションにより社会価値を創造し続けるために欠かすことができない資産だ。
 
「顧客資産」は、約7億人のお客様との接点を2030年までに10億人に拡大し、健康寿命の延伸に貢献することを目指す。

無形資産を豊かにする土壌が企業文化である。「志」の実現のために従業員一人ひとりが自分ごととして取り組む「自発型企業文化」変革を経営の一丁目一番地として、最優先で進める。

5.トレードオンのサステナビリティにチャレンジする。

サステナビリティ推進は、持続的な社会の実現だけでなく、味の素グループ自身の資本コストの低減と成長率の向上に資すると考えている。

トレードオフ(何かを達成するために何かを犠牲にしなければならないこと)になりがちな サステナビリティの取り組みをトレードオン(二律背反を超え、両立させること)にできるかチャレンジする。

6.ステークホルダーの皆様と「伝わった時が伝えた時」を大切に、対話を重ねる。

多様なバックグラウンドを持つメンバーが団結するには、わかりやすいコミュニケーションが不可欠だと考えている。

統合報告書改め「ASVレポート」においても、味の素グループのASV経営と「われわれはなぜ存在するのか、どこに向かうのか、どう向かうのか」をわかりやすく伝え、ステークホルダーの皆様との対話に活かしていきたい。

2030年までに、「10億人の健康寿命を延伸」ならびに「事業を成長させながら、 環境負荷を50%削減」と言うASV経営の2つのアウトカムについて、今後のASVレポートにおいて進捗状況を情報開示してはいかがでしょうか。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #CSR

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