記事のポイント
- 環境NGO6団体は、東京海上HDの機関投資家に対し要請書を出した
- 投資家の立場から、同社の化石燃料プロジェクト支援をやめるよう要請
- 2社の機関投資家から「前向きに対話を行っている」という回答が得られた
国内外の環境NGO6団体はこのほど、東京海上ホールディングスの機関投資家に送っていた要請書への回答があったと発表した。要請書は東京海上HDに対して、投資家の立場から化石燃料事業の保険引受・投融資をやめるようエンゲージメント(対話)を求めたものだ。機関投資家10社から回答があり、2社が対話を行った、あるいは今後行うと回答したという。(オルタナ副編集長・長濱慎)

■「エンゲージメントの内容は答えられない」と回答した投資家も
要請書は7月末に、東京海上HDの機関投資家(大株主である金融機関50社)に送ったものだ。
回答の中には「ネットゼロ達成のための長期目標を掲げ、達成に向けた道筋を模索するよう引き続きエンゲージメントを行う」と、積極的な対話が進んでいることをうかがわせるものがある一方で、「エンゲージメントの状況については回答できない」というものもあった。
これについて、NGO6団体の一つであるJACSES(「環境・持続社会」研究センター)の田辺有輝プログラム・ディレクターは、こう疑問を呈する。
「投資先とのエンゲージメントに守秘義務は生じないはず。また、各金融機関は投資先の議決権行使結果やその理由についてすでに公表していることから、このような回答は一貫性を欠いた対応であり、機関投資家としての社会的責任を果たすためには早急な改善が必要です」
東京海上HDは2021年9月、新規の石炭火力発電と炭鉱開発については保険引受や投融資を行わないと表明した。しかし新規の石油・ガス事業については制限を設けていない。
JACSESは22年1月、情報公開請求により、東京海上HDがブラジルのオフショア石油採掘事業の主要保険引受者であることを明らかにした。このプロジェクトは気候危機を加速させるだけでなく、沿岸部住民の人権侵害や、マナティー、イルカ、ウミガメなどの生態系破壊が問題となっている。
詳細はレポート「ブラジルのオフショア石油拡張の背後にいる保険会社」参照。
東京海上HDは気候変動対策を推進する保険業界の国際的イニシアティブである「ネットゼロ・インシュアランス・アライアンス」に加盟している。化石燃料プロジェクトの支援はこれと明らかに矛盾する行為だ。環境NGOは引き続き、機関投資家に対して東京海上HDへのエンゲージメントを求めるという。
■要請を行った環境NGO6団体
・JACSES(「環境・持続社会」研究センター)
・気候ネットワーク
・国際環境NGO FoE Japan
・国際環境 NGO350.org Japan
・メコン・ウォッチ
・Insure Our Future