記事のポイント
- 日本での性的マイノリティーへの理解は2012年から本格化した
- 企業の施策は直接支援や環境整備などに、浸透した職場は「働きやすく」
- 「LGBTQ+」「SOGIE」「アライ」、LTBTQ施策のキーワードに
オルタナは9月21日、「第25回SBL月例セミナー」を開いた。テーマは「企業経営とジェンダーギャップ~ゼロから始めるLGBTQ施策~」。ゲストに認定NPO法人虹色ダイバーシティの有田伸也事務局長を迎えて、企業が性的マイノリティーを含む多様な人材を生かすための施策などを聞いた。(オルタナ編集部)

LGBTQ+(性的マイノリティーの総称)は人口の約3~8%に当たる。「佐藤」や「鈴木」姓と同程度いるが、周囲に相談相手がおらず、職場で孤立しがちだ。そこで、今回のSBL月例セミナーでは、企業がLGBTQ施策をどう取り入れるべきかをテーマに開いた。
ゲストには企業向けのLGBTQ研修を手掛ける認定NPO法人虹色ダイバーシティの有田伸也事務局長を迎えた。
虹色ダイバーシティは2013年に設立、大阪を拠点に活動する認定NPO法人だ。その活動内容は多彩だ。社会的教育という観点からセミナーなどを通じて、LGBTQ施策の啓発、LGBTQと職場や暮らしに関するアンケートを毎年実施している。加えて今年4月からは、「居場所づくり」を目指した事業も展開する。
相談相手が周囲におらず孤独感を抱えやすい性的マイノリティーやアライ(性的マイノリティーの応援者)の尊厳を守り、「誰一人取り残さない」社会を目指す。

有田氏はLGBTQに関する出来事を振り返った。始まりは2012年、厚生労働省が自殺総合対策大綱に「性的マイノリティへの支援の充実」と明記した。嫌がらせなどの人権侵害の疑いのある事実が分かった場合に調査と適切な措置を講じることや、教職員の理解促進や適切な教育相談の実施などが掲げられた。
翌13年には東京ディズニーシーで「同性結婚式」が開かれた。ある同性のカップルが東京ディズニーリゾートに対して結婚式を挙げられるか尋ねたことがきっかけとなった。
当初は「式を挙げるなら、新郎新婦の格好をしてほしい」との回答だった。このやり取りがTwitterに投稿すると1000件超の反応があった。東京ディズニーリゾート側の方針も変わり、結婚式を挙げることができた。
2016年に「PRIDE指標」が始まる。この指標は任意団体の「work with Pride」が日本初の職場におけるLGBTQなどの性的マイノリティーへの取り組みを評価するものだ。「PRIDE指標2021」の応募数は300(応募総数573社)を数える。
さらに2017年以降にはLGBTがモデル就業規則に入れられたり、同性間の婚姻が認められていない現状が憲法違反であることを問う訴訟、通称「結婚の自由をすべての人に」裁判が起こったりしている。
■働きやすさの向上にも
職場でのLGBTQ施策を講じることは、働きやすさ向上にも寄与すると有田氏は話す。施策が講じられている職場は、カミングアウトや相談がしやすい。有田氏は「望む性別で働けることからメンタルヘルスや勤続意欲、心理的安全性のいずれも良い結果を出す」と話す。