記事のポイント
- 執筆家・環境保護アンバサダーの四角大輔さんが『超ミニマル主義』を発行
- 四角さんは万人に届くヒット作品を生み出す法則として「軽量化」を強調
- 軽量化を極めた「超ミニマル主義」を貫くことで「一人」にこだわる
ニュージーランド在住の執筆家・環境保護アンバサダーの四角大輔さんがこのほど『超ミニマル主義』(ダイヤモンド社)を発行した。同書では四角さんが音楽プロデューサー時代に10回のミリオンヒットを達成した「プロデュース術」をまとめた。100万人に聞かれた曲はどう生まれたのか、四角さんは「すべてたった一人のために作られている」と言い切る。(オルタナS編集長=池田 真隆)

同書の著者・四角大輔さん(52)は大学卒業後、ソニー・ミュージックエンターテイメント、ワーナーミュージック・ジャパンでアーティストのプロデューサーとして活躍した。平井堅やCHEMISTRY、絢香、Superflyなどを担当し、ミリオンヒットの達成回数は10回を誇る。
40歳を機に、ニュージーランドの湖畔の森に移住し、自給自足の生活を送る。アウトドア雑誌など多数の媒体に連載を持っていたが、49歳ですべての仕事と定期連載を手放し、作家業と環境活動に専念する。
環境省「森里川海プロジェクト」、国際環境NGO Greenpeace Japanなどのアンバサダーを務める。今回書き上げた『超ミニマル主義』は構想10年、執筆期間4年を掛けた。
■軽さ重視のスケジュールから有給の取り方まで
同書はプロデュース術だけでなく、「働き方」に焦点を当てた一冊だ。四角さんがプロデューサー時代になぜ10回もミリオンヒットを達成することができたのか、その秘けつを詳細に振り返っている。
スケジュールの立て方やタスク整理、思考方法などに加えて、鞄の中身やスーツ、インプットする情報との向き合い方などもまとめた。同書にはキーワードがいくつか散りばめられている。
筆者が気になったのが、「ハイライト思考」と「軽量化」「可視化」の3つだ。ハイライト思考とは「超短期集中」と言い換えられる。常に集中して努力し続けるのではなく、仕事を大局的にとらえて、最も力を入れる瞬間に最大限のパフォーマンスを発揮することを指す。
そのために重要なことが「軽量化」と「可視化」だ。自分が抱えているタスクを整理して、それぞれのタスクに「重さ」を付ける。このように可視化することで、自分の状況を客観視できるようになる。軽ければ、精神的にも落ち着く。
詳細は省くが、同書ではタスク整理を単なる優先事項の振り分けと捉えず、モチベーションを引き出す独自の方法で提案する。さらに、普段着るスーツや鞄の中身、スマフォのアプリ、PCのデスクトップなどまで、四角さんは徹底して「軽量化」にこだわる。
軽さを追求した結果、「超ミニマル主義」にたどり着くと定義した。そして、この超ミニマル化が進むほど、ハイライト思考が際立つというロジックだ。
■「超ミニマル主義」とは「一人に向き合うこと」
約400ページに渡る内容の前半は「テクニック論」から始まる。財布、書類、名刺、スーツ、アウター、シューズ、仕事部屋などの有機物を「軽くする」ためのノウハウを紹介し、その後、インプットする情報、スケジュールやタスクの軽量化のポイントをまとめた。
これらのテクニックはハイライト思考を引き出すための「準備」と言える。筆者が最も同書で集中して読んだのは最後の章だ。その章では、「思考と習慣」という無形物を軽量化するポイントを紹介している。無意識のうちに日々膨大な情報をインプットしている現代人にとっては、思考の整理に役立つ。
軽量化を追求する「超ミニマル主義」になるとどのような思考方法になるのか。それは「人にこだわるようになる」ということだろう。四角さんはミリオンヒットした作品を振り返り、同時多発的に数万人が一気に購入するということは起こらないと言う。
作品に共感した最初の一人が次の人にその熱を伝播させることが繰り返すことで「ヒット」が生まれるとする。そのためにプロデューサーが持つべき視点として、「最初に最大限の熱量を持って届ける一人と最終的に受け取る一人のことを考えた上でコミュニケーションを取ること」と説明した。
四角さんはヒットの法則として、「誰かに届くだろう」「みんなに届け」ではなく、「あの人に届けたい」という思いをどこまで強く持てるかがカギだと強調する。その思いを自分自身で高め、チャンスに力を発揮できるために常に「軽くいる」ことを「超ミニマル主義」として勧めた。
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