記事のポイント
- オランダの機関投資家が、フランスのエネルギー大手トタル社から投資撤退
- 撤退の理由は、トタル社がアフリカの石油プロジェクトを主導していること
- 投資家の動きを受け、欧州議会も石油プロジェクトの再考を働きかける決議
国際環境NGOの350.org Japanは10月12日、東アフリカで進む石油プロジェクトについてオンライン会見を開いた。ウガンダとタンザニアをまたいで1400kmを超える石油パイプラインを敷設する計画で、住民の人権侵害や生物多様性の破壊が懸念されている。会見にはオランダの機関投資家も出席し、プロジェクトを主導する仏化石燃料大手・トタルエナジーズからのダイベストメント(投資撤退)を報告。欧州会議も、投資家に追随する動きを見せた。(オルタナ副編集長・長濱慎)

■ライオンが生息する国立公園で石油採掘の計画
350.orgは、2007年に米カリフォルニアで設立された。日本では2015年から活動し、化石燃料からの脱却と自然エネルギーへのシフトを金融機関などに呼びかけている。
今回の会見は、11月のCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)の開催地がエジプトであることにちなみ、同じアフリカ大陸で進む「東アフリカ原油パイプライン(EACOP)」を取り上げた。
EACOPは、ウガンダで採掘した原油を電気で加熱し、タンザニアの港まで輸送する計画だ。ウガンダ産の原油はワックス分を多く含むため、流動性を高めるために加熱する。
全長は1443kmで、2023年中に土地の取得が終わり次第の着工を予定している。しかし350.orgなどの調査では、石油生産ピーク時に年間3430万トンのCO2(ウガンダの年間排出量の7倍に相当)を排出する。
原油はウガンダのマーチソンフォールズ国立公園で採掘するため、ナイルワニやライオン、アフリカゾウが暮らすサバンナや森林の破壊が懸念される。建設にあたり10万世帯が立退を強いられるが、補償も進んでいないという。人々の暮らしを支える、淡水魚業への打撃も懸念事項だ。
EACOPはフランスの化石燃料大手・トタルエナジーズ(トタル)が主導し、中国、ウガンダ、タンザニアの国営石油開発事業者も参画している。

■投資家に懸念が広がり欧州議会も「人権侵害に関する決議」を採択
オランダの資産運用大手・アクティアムは2022年4月、EACOPを受けトタルの投資を全て引き上げた(ダイベストメント)。会見では、アセットマネージャーのグレタ・フェアマン(Greta Fearman)さんが報告を行った。