記事のポイント
- 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は2022年版の報告書を発行
- 報告書では1400社のCSRレポートなどを対象に調べたAI調査の結果を公表
- TCFDが開示を求める11項目すべてに対応した企業はわずか4%だった
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は10月13日、2022年版の報告書を発表した。報告書では企業のCSRレポートなどをAIが分析した結果も公表した。TCFDに賛同している企業約1400社を調べたところ、TCFDが開示を求める11項目すべてに対応した企業はわずか4%だったことが分かった。(オルタナS編集長=池田 真隆)

TCFDは10月13日、「2022 Status Report」を公開した。この報告書ではTCFDが2017年6月にまとめた最終報告書(TCFD提言)に対して、企業がこの5年間でどのように情報開示に取り組んできたのかをまとめた。
TCFDへの賛同機関数は急速に増えている。2022年9月22日時点で、世界全体で3819機関に上る。このうち、日本の賛同機関数は全体の約3割に及ぶ1062だ。
報告書では人工知能を使って約1400社のCSRレポートなどを調べた調査結果も公表した。この調査結果では、TCFDが開示を推奨する11項目の対応状況を調べた。
TCFDでは、企業に4提言11項目を、気候変動への情報開示として推奨している。4提言とは、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」を指す。それぞれの提言に開示を求める「項目」が付く。
ガバナンスには、「①取締役会における監視体制」「②経営者の役割」、戦略には「③リスクと機会」「④事業・戦略・財務計画への影響」「⑤シナリオに基づく戦略のレジリエンス」、リスク管理には「⑥リスクを評価・識別するプロセス」「⑦リスク管理プロセス」「⑧組織全体のリスク管理体制の統合」、指標と目標には「⑨リスクと機会の評価に使用する指標」「⑩スコープ1,2,3のGHG排出量の開示」「⑪リスクと機会の管理に使用する目標と実績」がある。
AI調査では11項目のうち何らかの一つに取り組んでいる企業の割合は8割を超えたが、11項目すべてに対応している企業はわずか4%だったと発表した。
スコープ1~3のGHG(温室効果ガス)排出量への対応は、44%だった。この数値は2019年の34%、2020年の40%と比べて微増した。
気候変動についてリスクと機会の両面から情報開示した企業は61%に及び、昨年の53%、2019年の42%から堅調に伸びていることが明らかになった。