記事のポイント
- 大手会計事務所EYは気候情報開示について「意味のある開示は少ない」と分析
- 47カ国1500社を分析した結果、TCFDが勧める開示のカバー率は84%だった
- 一方、財務諸表で気候関連事項を定性的・定量的に言及したのは29%だった
大手会計事務所のアーンスト・アンド・ヤング(EY)はこのほど、企業の気候情報に関する開示について調べた。47カ国1500社超を調べた結果、TCFDが勧める開示項目のカバー率は2021年の70%から84%に上がった。一方で、財務諸表と気候関連事項を統合したのは、調査対象企業の3分の1未満(29%)で、「意味のある開示は少ない」と結論付けた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

EYは10月20日、 「EYグローバル気候変動リスクバロメーター」(第4版)を発表した。47カ国1500社超の企業の気候情報開示を調査した。
調査ではTCFDが開示を推奨する4提言「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の開示のカバー率は84%で、昨年の70%から大きく上がった。一方、質については44%で、昨年の42%と比べて微増だった。
企業は気候情報開示のカバー率と情報量を上げているが、課題は気候情報開示と財務諸表との統合だ。気候関連事項を財務諸表で定性的・定量的側面として言及したのは、調査対象企業の3分の1未満(29%)だった。財務と統合した企業が限定的なので、EYは「開示行為が脱炭素化を加速していない」とした。
EYはその理由を3つ挙げた。一つ目は財務部門に財務諸表における気候変動リスクの位置付けを理解するための知識が備わっていないこと。二つ目は、「対象期間が一致しないこと」だ。
財務諸表は比較的「短期間」を対象とする。だが、気候関連リスクは「長期間」に関するものであるため、対象となる期間が一致しない。最後は、気候シナリオに伴う「不確実性」と「変動性」を指摘し、これらのシナリオを財務モデルに組み込むことが困難なためとした。