GRI、マテリアリティの定義で「人権」を強調

記事のポイント


  1. GRIは昨年10月に発行した改訂版でマテリアリティの定義を見直した
  2. 「組織が経済、環境、人権を含む人々に与える最も著しいインパクト」とした
  3. GRIはCSRレポートのガイダンスであり、改訂版への対応は2023年1月から

サステナビリティ情報開示の国際的枠組みGRI(グローバル・レポ―ティング・イニシアチブ)はこのほど、「GRI改訂版共通スタンダード2021」の日本語訳を公開した。GRIはCSRレポートの「ガイダンス」だ。改訂版ではマテリアリティ(重要課題)の定義を見直し、「人権」対応を強調した。(オルタナS編集長=池田 真隆)

GRIはCSRレポートの「報告ガイダンス」として世界で最も活用されている「GRIスタンダード」を策定する

GRIとはオランダが本部の国際NGO「GRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)」を指す。

CSRレポートの「報告ガイダンス」として世界で最も活用されている「GRIスタンダード」を策定している。企業はCSRレポートを発行する際に、GRIが定めたこの内容をもとに情報開示を行う。

GRIスタンダードが開示を求める内容は、「トリプルボトムライン」を軸とする。トリプルボトムラインとは「環境」「社会」「経済」の3側面を表す。組織がこの3側面に与える影響について多様なステークホルダ―から意見を取り入れ開示するよう求めた。

昨年10月、GRIは「GRI改訂版共通スタンダード2021」を発行した。2023年1月以降は企業がCSRレポートを発行する際にはこの新しいガイダンスの内容を参照する必要がある。

改訂版ではマテリアリティの定義を見直し、「人権」を強調した。「組織が経済、環境、ならびに人権を含む人々に与える最も著しいインパクトを表す項目」とした。

国連ビジネスと人権指導原則では、「人権」とは、「私たちが人間として享受する権利と自由であり、私たちが安全、安心、そして尊厳を持って生きるためのもの」としている。

企業には、規模、業種、経営状況、所有者、構造などに関わらずバリューチェーン全体に渡って人権を尊重することが期待されている。そのため、GRIは企業に人権に与えているポジティブとネガティブの両方のインパクトを調べ開示することを求めた。

改訂版ではマテリアルな項目を特定するプロセスをこう説明した。まず、産業の特性を調べ、事業が社会にもたらす影響を調べる。その次に関連するステークホルダーや専門家と対話しながら、社会にもたらすインパクトを明確化していくように求めた。

CSRコンサルタントの安藤光展氏は改訂版で企業が気を付けるポイントについて、「よりダブルマテリアリティを意識した特定や見直しが必要になった」と話す。ダブルマテリアリティとは、「社会マテリアリティ」「インパクトマテリアリティ」ともいわれるものだ。

企業が社会から受ける影響を考慮したマテリアリティ(シングルマテリアリティ)ではなく、企業が社会に与える影響も考慮したマテリアリティを指す。

その上で、「人権について国内外で法制化やルール作りが進む現状を反映したものになった」とし、ウイグルで強制労働によって作られた綿花による衣類は、米国には基本輸出できなくなってしまった(2022年法制化)ことを例に出し、「人権が大きな経営リスクとなり、マテリアリティとして最大限に考慮しなければならなくなった」と強調した。

GRI改訂版共通スタンダード2021(日本語訳)

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #ビジネスと人権

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