記事のポイント
- 11月9日、COP27にて日本が気候変動に消極的な国に贈られる「化石賞」に選ばれた
- 化石賞の主催者は国際環境NGOの気候行動ネットワークで、日本は今回で3回連続の受賞
- 化石燃料への世界最大の公的資金の拠出国であることが受賞のきっかけに
国際環境NGOの気候行動ネットワークは11月9日、気候変動に消極的な国に贈られる「化石賞」に日本を選んだことを発表した。同賞は、COP27期間中、その日のテーマに合わせて発表されるもので、日本は化石燃料への公的資金の拠出が世界最多であることから、「金融の日」の化石賞に選ばれた。日本は3回連続の受賞となったが、そもそも化石賞とは何か。(オルタナ副編集長=吉田広子)

「化石賞」(The Fossil of the Day Award)は、1999年にドイツ・ボンで開催されたCOP5から始まった。その後、毎年恒例のセレモニーとして現在まで続いている。
化石賞を主催するのは、国際環境NGOの気候行動ネットワーク(CAN)だ。130カ国以上1800団体から成るグローバルなネットワークで、1989年に設立した。調査や分析に基づいた政策提言などを行い、気候変動交渉にかかわっている。
■日本はなぜ「化石賞」を受賞したのか
COP27の「金融の日」、日本は化石賞に選ばれた。化石燃料関連事業に対して、2019 年から 2021 年にかけて年間平均 106 億米ドル(約1.5兆円)を拠出し、世界最大の公的資金の拠出国であるからだ。
CANは「石炭火力発電にアンモニアを使用するなど、『誤った解決策』を他国に輸出しようとしている」と批判し、岸田文雄首相がCOP27に参加しなかったことも理由の一つだとした。
日本は、2019年、2021年、2022年と3回連続で化石賞を受賞した(2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で延期)。それ以前も、日本は化石賞をたびたび受賞している。
2021年のCOP26では、岸田首相が演説で、アンモニアや水素を混焼する「ゼロエミッション火力」の推進に言及したことが、気候変動対策に消極的だと判断された。
2019年のCOP25では、化石賞を2回受賞。梶山弘志経済産業大臣(当時)と小泉進次郎環境大臣(当時)がそれぞれ温室効果ガス削減に積極的な姿勢を見せなかったことが理由だった。
化石賞は、COP期間中、ほぼ毎日、その日のテーマに合わせて発表される。2021年のCOP26では、英国や米国、フランス、オーストラリアなどが受賞し、基本的には先進国が受賞することが多い。
COP27の「金融の日」は日本だったが、その翌日の10日は、議長国であるエジプトが選ばれた。
エジプトでは、人権問題に関する懸念が高まっており、国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチは、COP27周辺で活動家などが不当に逮捕されている現状を訴えている。
現地を取材した有志団体record1.5の黒部睦さんは、「これまで化石賞について報道で見聞きしていたが、実際の授賞式は、エンタメ的な雰囲気があり、単に日本を責めるというものではなかった。ポップさを演出しつつ、石油・ガス・石炭への融資額の多さや首相の態度が背景にあるということを伝えていた。とはいえこの事実は受け止めるべきであり、事実のみの報道ではなく、前後や会場の雰囲気も踏まえて伝え考える必要性を感じた」と話した。