うつの研究にマウスの強制水泳実験は必要?NGOが廃止訴え

記事のポイント


  1. 英コスメブランドLUSHが「ラッシュプライズ2022」の受賞者を発表
  2. NZの団体は「小動物の強制水泳実験」の廃止を求める署名キャンペーンを実施
  3. 「科学的に有効ではない」という結論を引き出した

英国発ナチュラルコスメブランドLUSH(ラッシュ)と英消費者団体エシカルコンシューマー・リサーチアソシエーションは11月18日、動物実験の代替法開発や動物実験廃止を推進する活動を表彰する「ラッシュプライズ2022」の受賞者を発表した。うつ状態の研究の一環で実施される「小動物の強制水泳実験」の廃止を求めるキャンペーンをはじめ、11カ国・14のプロジェクトに、総額25万ポンド(約4000万円)を授与した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

ラッシュ ニュージーランドの店舗では、署名キャンペーンを実施した

ラッシュプライズは2012年、動物を使用しない毒性学を推奨し、動物実験の廃止を目指して非人道的でない研究やロビー活動を行う個人・団体を称えることを目的に始まった。

「世論喚起部門」「サイエンス部門」「トレーニング部門」「ロビー活動部門」「若手研究者部門」の5分野で、毎年最大総額25万ポンド(約4000万円)を授与している。

今年のロビー活動部門受賞には、「小動物の強制水泳実験廃止に向けたキャンペーン」を展開するニュージーランドのNPO「NZAVS」が選ばれた。

ラッシュの資料によると、強制水泳実験とは、ラットやマウスなどの小動物を水の入った脱出不可能なビーカーの中に入れ、出口を探したり、もがいたりする様子を観察し、小動物が「諦める」まで泳がせるという「科学的手法」のことだ。精神的に落ち込んでいるマウスは、幸せなマウスよりも早く諦めてしまうという理論に基づく。

1970年に発明されて以来、何千匹ものマウスが抗うつ剤を投与され、うつ病を誘発するように遺伝子操作がなされてから、水に沈められているという。

しかし、大手製薬会社4社のデータを用いて行われた分析では、ある化合物が人間に有効な抗うつ薬となるかどうかを判断する上で、強制水泳実験を用いた予測は非常に精度が低いことが分かった。

NZAVSが強制水泳実験の廃止を求める署名キャンペーンなどを実施した結果、ニュージーランドの経済開発・科学・イノベーション特別委員会(2020年2月20日実施)は、この試験は「ほとんど役に立たない」と結論づけた。

ラッシュプライズのディレクター・ロブ・ハリソン氏は、「政府を説得することで実験をやめさせる方法があるという気付きがあった。学生などに訴えかけ嘆願書に署名してもらうことで、キャンペーンに注目を集めることにも成功した」とコメントしている。

yoshida

吉田 広子(オルタナ輪番編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。2025年4月から現職。執筆記事一覧

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キーワード: #生物多様性

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