神戸市:消費者4割「てまえどり」、わかりやすさが功を奏す

記事のポイント


  1. 神戸市:消費者4割「てまえどり」、わかりやすさが功を奏す
  2. キャンペーン実施後「賞味期限が近い商品購入」認知が4割に
  3. ゴミ1割減、コンポストや水切りも「わかりやすく伝えていきたい」

スーパーなどの陳列棚で手前の商品から手に取るキャンペーン「てまえどり」。このたび流行語大賞トップ10入りを果たして、話題となった。「てまえどり」は神戸市がフードロス削減対策の一環で2018年に生まれたキャンペーンだ。市民向けのアンケートでは「てまえどり」を意識した人が4割に達した。同市では25年までにゴミの1割削減を目指す。「わかりやすく伝えていくこと」に重きを置く。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

市環境局のキャラが「てまえどり」を呼びかけ

「てまえどり」は神戸市のゴミ対策のなかから生まれた。

神戸市は2016年に「第5次神戸市一般廃棄物処理基本計画」を策定した。その中で2025年までにゴミ排出量10%削減(2010年比)を目標に掲げる。その実現に向けて、ターゲットの1つに据えたのが「食品ロスの削減」だった。

燃えるゴミのうち、約3割が野菜や食品といった生ゴミが占めている。生ゴミの排出減に向けてポイントになるのが、食品ロス減だ。基本計画のなかでは市民、事業者に食品ロス対策を求めるとともに、行政としても「啓発の推進」を掲げた。

「廃棄物処理計画基本計画」を受けてまとめたのが「神戸市における食品ロス削減に向けたアクションメニュー」だ。食品ロスの見える化・自覚化や、食品在庫の管理と計画的な買い物、といった5つのアクションを掲げる。

「てまえどり」キャンペーンは2018年10月に初めて実施した。環境局のマスコットキャラクターが「手前からとってね」と呼びかける姿は、消費者も親近感がわいたようだ。同市環境局の清水充則氏は「『手前から取る』ことを意識する人が4割にのぼった」と話す。

21年6月からは大手コンビニ3社が「てまえどり」を推進するなど、全国的に広がりを見せた。取り組みがじわりと広がり、新語・流行語大賞トップ10に入った。清水氏は「うれしいと同時に、取り組んでから4年が経過していて意外さもあった」と打ち明ける。

わかりやすさを意識する

フードロス、ゴミ問題を解決するうえで自分ごと化するためにも、「わかりやすさ」や「親近感」は不可欠だ。神戸市ではフードロスを考えるきっかけづくりとして「食品ロスNOかるた」を作成し、意識向上を図る。

神戸市では既存の取り組みを強化しつつ、新しい施策も考える。清水氏は「個人的な思いとしては、多くの水分を含む生ゴミの水切りを動画で伝えたり、コンポストの体験などを実現していければ」と意欲を示した。

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #フードロス

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