記事のポイント
- LIXILがアルミのリサイクル技術を独自に開発した
- アルミリサイクル材を利用すると、従来比でCO2排出量の97%削減できる
- これにより、同社はビル・住宅関連部門の脱炭素を加速させる
LIXILはこのほど、アルミリサイクル材を使用した低炭素アルミ形材を開発したと発表した。リサイクルしたアルミ材を使用すると、アルミの地金を使うのに比べCO2の排出量を最大97%削減できるという。アルミ材はビルや住宅の窓枠などに多く使うため、同社は窓枠材を皮切りに、建築・住宅関連部門の脱炭素を進める。(オルタナ編集部)

LIXILは、「ゼロ・カーボンとサーキュラー・リビング(CO2ゼロと循環型の暮らし)」を掲げ、2050年までの長期目標を今年6月に更新した。2031年には、CO2排出量削減の目標をスコープ1、2で50%、スコープ3で30%減(いずれも2019年比)と設定した。
海外の建築業界では、原材料の調達から廃棄までのGHG(温室効果ガス)の排出を見える化する「エンボディード・カーボン」の情報開示が重視されつつある。これまでもZEB(ゼロ・エミッション・ビル)やZEH(ゼロ・エミッション・ハウス)が普及してきたが、今後は建設部材のCO2排出量削減が必要だ。
同社は、エンボディード・カーボンへの取り組み強化とスコープ3のCO2排出量を一番多く占める「アルミ地金」に着目し、今回の「リサイクルアルミの活用」に取り組んだ。
1㎏の新地金を製錬すると10㎏のCO2を排出するのに対し、工程内端材やスクラップからアルミリサイクル材を製造する場合はCO2排出量を0.3㎏まで抑えることができるという。これにより、課題であったスコープ3のCO2排出量の30%を削減でき、目標達成に大きく貢献する。
■リサイクルアルミは今後の成長が見込まれる
アルミニウムは金属の中では軽量で、また加工しやすいという特徴を持つ。そのため、リサイクル材としての使用は非常に需要がある。
しかし、リサイクルアルミ材を建材として活用するには時間がかかった。リサイクルに使われる材料には合金やその他の金属が含まれていることが多く、それらを選別しアルミのみを取り出す技術がなかったからだ。しかし、同社はこの技術を確立した。もう一つの課題であった「リサイクル材の安定供給」に関しても、LIXILは「見込みがある」としている。
■2031年にアルミリサイクル100%へ
同社のアルミリサイクル率は、2022年3月時点で70%となった。アルミリサイクル材は新地金と同様の品質であることが証明を受け、サステナブル経営推進機構(SuMPO)による「エコリーフ環境ラベル」を取得した。
同社は来年度からビル向け建材として、アルミリサイクル材を用いた低炭素型アルミ形材を順次発売するという。2031年にはアルミリサイクル率を100%にする予定だ。
アルミのリサイクル材としてのポテンシャルの高さや今後の廃棄物調達競争などにより、低炭素型アルミ形材の販売価格の高騰を不安視する声も見られた。
しかし、吉田聡・LIXIL執行役専務は「アルミリサイクル材の製造コストは従来よりも高くなる可能性はあるが、気候変動対応のために我々はサステナブルな方向へ舵を取らなければならない」と決意を示した。 これにより、販売価格の上昇も考えられるが、吉田執行役専務は「環境に配慮した弊社の取り組みに理解のあるお客様へ提供していきたい」と期待を込めた。