■論考・サーキュラーエコノミー(18)

ロシアによるウクライナの侵略を契機に、資源価格の高止まり状態が続いている。これが一因となって世界的に物価を押し上げ、さらにインフレ懸念を引き起こして各国の中央銀行を慌てさせている。借金大国日本は金利を上げられないため、日銀の金融政策は手詰まり状態で、苦慮の度合いは他国の中央銀行よりも著しい。
最近は、スタグフレーション(不況下の物価上昇)という言葉もささやかれるようになった。この言葉を聞くと、筆者にとっては懐かしい思いがする一方で、ある種の不安が胸をよぎる。
学生時代に経験した第1次石油ショック(1973年)だが、それが原因となって現れたスタグフレーションは、戦後の日本経済に深刻な経済的影響を与えた。
実際、日本は戦後初めてのマイナス成長を経験したのだ。当時の学生には、就職氷河期という辛い体験が襲いかかった。だから、今回の資源高による物価上昇にもそこはかとない不安を感じてしまう。
だが、ここで立ち止まって冷静に考えてみる必要がある。資源価格が上昇するということは、資源の需要量に対して供給量の制約が厳しくなっているということであり、市場から「資源を節約利用せよ」というシグナルを受けていることに他ならない。