記事のポイント
- WWFは「生物多様性リスクフィルター(BRF)」を発表した
- BRFは、生物多様性に関連したリスクがチェックできる無料オンラインツール
- 企業や投資家の対策や情報開示を後押しするのが狙いだ
WWF(世界自然保護基金)は1月16日、世界経済フォーラム(ダボス会議)で企業や金融機関を対象とした「生物多様性リスクフィルター(BRF)」を発表した。BRFは、生物多様性に関連したリスクがチェックできる無料オンラインツールだ。2030年までの国際目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」の達成を後押しするために開発された。(オルタナ副編集長=吉田広子)

BRFは、企業や金融機関が、自社のビジネスやサプライチェーン、投資先の事業などに、生物多様性に関連したリスクが無いかをチェックし、対策を講じるためのツールだ。
BRFの基盤となっているのは、WWFやIUCN(国際自然保護連合)、生物多様性に関するリスク管理ツールENCOREなどが提供する生物多様性に関連する50以上のデータ群だ。種(野生生物)や生態系、保護地域、森林破壊、生息地の破壊、汚染、農業のための土地利用変化など、生物多様性損失に関与するさまざまな情報が含まれている。
WWFは「こうした情報を手に入れることで、投資家は、最もリスクが軽減できる分野への優先的な投資を行うことが可能になる」としている。生物多様性に関するリスクを分析する、多様なデータを集めたプラットフォームの提供は、世界初の試みだという。
「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」は、2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(CBD-COP15)で採択された。2030年までに生物多様性の損失から回復に転換(ネイチャー・ポジティブ)することが目指されている。
生物多様性の損失は危機的な状況で、1970年から約50年間で生物多様性が69%減少したほか、今後数十年間で100万種の生物が絶滅するおそれがある。
そうしたなか、世界では、企業や金融機関に、生物多様性への影響と依存度を評価し、開示することを義務付ける動きが広がりつつある。WWFは、「生物多様性リスク」の把握に悩む企業や投資家に対し、無料ツールを提供することで、自然と調和した経済や社会にシフトしていくことを目指す。