
ヒートアイランド現象の抑制などを目的に、京都大学が大阪ガスの協力を仰いで実験していた同社ビル屋上での稲の水耕栽培が成功し、9日、稲刈りが行われた。京大によると、屋上に水耕栽培で水田を作った前例はないという。
屋上を緑化する試みは、断熱性や景観の向上などが見込めることから、企業や官公庁などで導入されてきた。京都大学大学院農学研究課水環境工学研究室では、ヒートアイランド対策、都市部での食料自給、生態機能の向上などを確かめるため、この5月、大阪市中央区にある大阪ガス本社ビル屋上に稲を作付けした。
この日は、大阪ガスの職員や京大の学生ら7人が参加し、たわわに実ったコメ約5㌔を手で刈り取った。実験を担当した川島茂人教授は「予想していたよりも栽培がうまくいった。今後、都会の屋上や、学校などにどんどん増やしていきたい」と実験の成功に手ごたえを感じていた。
水耕栽培は大規模工事が不要なうえ、小さなユニットを組み合わせることで面積に応じて柔軟に設置できることから、屋上向きといわれる。
大阪ガスの屋上庭園では、2009年から野鳥の会が生態調査を行っている。同社のCSR・環境部の田畑真理さんは「水辺ができることで、もっとたくさんの野鳥がやってくるように、生態機能を高めたい。今後は、食育や企業のコミュニティの場にもしていきたい」と話していた。(オルタナ関西支局=小林律子)