
自分たちの手で社会をよりよくしていくために起業する若者が増えている。少年期にバブル崩壊を迎え低迷する経済の中で仕事を始めた30代が中心となり、フィリップ・コトラーが提唱する「マーケティング3.0」を実践しているのだ。
greenz.jpという WEBサイトがある。「あなたの暮らしと世界を変えるグッドアイデア厳選マガジン」だ。発行人の鈴木菜央氏(35)は社会やひとりひとりの「未来可能性を最大化する」ための活動だという。サイト開設当時の事業主から独立し、株式会社ビオピオを設立して運営している。
「green drinks」や「Happy Outdoor Wedding」など、既存の商業主義にとらわれない新しい価値観を提供し続けている。コミュニティやメディアについて学ぶワークショップ「green school Tokyo」の企画運営も行う。ポジティブなことに興奮する人が集まってくるそうだ。今後は NPO法人化して、よりオープンなビジネスを行っていくという。
株式会社リライトを立ち上げた籾山真人氏(35)、酒井博基氏(33)の情報発信もまたクリエイティブといえる。東京立川の不動産情報を取り扱う「立川空想不動産」では、魅力ある空家を掘り起し、その活用方法まで空想して提案することでユーザーとオーナーを結びつける。
「東京ウェッサイ」という FM立川のラジオ番組も運営する。「街をハッピーにすることを目的としたソーシャルエンターテイメントラジオ」だという。エリア限定だからこそできる、地域情報のネットワーク化を狙う。
こうした動きに着目し、彼らの講演を聴く「エリアムーブメント研究会」が東京新宿で毎週火曜夜に開催中だ。鈴木氏、籾山氏、ほか「脱東京不動産」の寺井元一氏、「まちの保育園」を運営する松本理寿輝氏など8人の連続トークで、生い立ちや起業の動機、具体的な仕事の内容などを解き明かす。主催は「中央線デザインネットワーク」という非営利の任意団体。
一見、バラバラに活動している起業家たちだが、実は多数の協働プロジェクトでつながっている。研究会に参加し、彼らのオープンネットワークに接続することで、新たなビジネスチャンスが生まれるかもしれない。(オルタナ編集部=有岡三恵)