「プラスチック製包装税」導入から1年 英国の厳しい現実

記事のポイント


  1. 英国政府は昨年4月から「プラスチック製包装税」を導入した
  2. 世界で製造されるプラスチックの約9割は未だ再生されていない
  3. 今年10月からイングランドで使い捨てプラスチック製品の禁止対象を拡大予定

英国政府は昨年4月から「プラスチック製包装税(Plastic Packaging Tax)」を導入した。課税額は包装1トン当たり200ポンド(約3万1700円)。プラスチックごみ回収と再生を促すのが狙い。年間10トン以上のプラスチック製包装を製造、輸入した企業や事業者に課税される。導入から間もなく1年、プラスチックごみの再生はどこまで進んだのか。(在ロンドン国際ジャーナリスト・木村正人)

プラスチックは実用的で壊れにくく、私たちの日常生活に浸透している。スーパーに並ぶプラスチック製包装の野菜・肉・魚介類からクリーム、医薬品の容器に至るまで、ほとんど一度だけ使用され、その後は焼却されたり、埋め立てられたり、再生のため海外に輸出されたりしている。

しかしプラスチックは分解に数百年かかり、海洋汚染など環境に深刻な被害を与えている。製造から廃棄に至るまで温室効果ガスの主要排出源の一つとして厳しい目が向けられている。このためプラスチックを廃棄するのではなく、回収して再生して使おうという動きが環境に敏感な英国や欧州連合(EU)で加速している。

英国のプラスチック製包装税は、主にサプライチェーンで使用される使い捨てプラスチックが対象で、プラスチックカップや衣類のハンガー、生鮮食品用ラップ、梱包用の箱、ボトルなどが含まれる。再生プラスチックを30%以上含む包装は対象外で、再利用可能な医療用ゴミ箱や、輸入する際の道路・鉄道・船舶・航空用コンテナなども免税される。

企業や事業者は免税されたプラスチック製包装の重量を四半期ごとに英国歳入関税庁(HMRC)に申告しなければならない。英国の包装メーカー兼コンサルタント会社DuoがHMRCに情報公開請求したところ、昨年4~9月の半年間に税収が約1億3587万ポンド(約215億円)にのぼり、重量にして約67万9000トンの包装に対して課税されていた。

一方、再生プラスチックを30%以上使っていた免税対象の包装は約116万3000トン。包装の6割以上に再生プラスチックが30%以上使われていた計算になる。英国政府は初年度に2億3500万ポンドの税収を見込んでいた。実際には2億7000万ポンドを超えそうなことから、再生プラスチックを使った包装への移行には時間がかかる可能性がある。

世界の約9割のプラスチックごみが再生されていない

使い捨てプラスチック製品の禁止対象を拡大

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #脱プラスチック

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