オルタナ総研統合報告書レビュー(21): トヨタ自動車

トヨタ統合報告書2022は、トヨタがめざす未来を実現するため、どの様な方針・戦略で経営課題に取り組むかを、ステークホルダーに伝えるものです。豊田章男社長は、「トヨタがめざす未来とは、自動車メーカーから、モビリティカンパニーに生まれ変わり、「幸せの量産」という「思想」を、「トヨタ生産方式(TPS)」という伝統の「技」で実現することです」とコミットしています。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

トヨタ統合報告書2022

「社長メッセージ」の中で豊田社長は、「この13年間、私がやってきたことは、「幸せの量産」という「原点」、「思想」に立ち戻ることでした。

「もっといいクルマをつくろう」、「世界一ではなく、町いちばんをめざそう」、「自分以外の誰かのために仕事をしよう」。

そう言い続け、自らハンドルを握り、現場で、行動で、トヨタの「思想」と「技」を示し続けてまいりました」と述べています。

「幸せの量産」というトヨタの「原点」、「思想」とは、「豊田佐吉、豊田喜一郎が、本当につくりたかったものは、「商品を使うお客様の幸せであり、その仕事に関わるすべての人の幸せ。根底の想いは、「幸せを量産する」こと」と統合報告書は記しています。

トヨタの「創業の精神」は「自分以外の誰かのために仕事をしよう」「誰かの仕事を楽にしよう」というものです。

「創業の精神」は豊田佐吉が、母親が毎晩夜なべした機織り仕事を楽にできないかと、23歳の時に織機「豊田式木製人力織機」を発明したことが原点です。

豊田佐吉の遺志を体して励むべきことを機会あるごとに確認する為、「豊田綱領」が制定されました。

トヨタの原理原則である「豊田綱領」は、「現在に至るまでトヨタグループの精神的支柱であり、トヨタ自動車を含むグループ各社の企業理念、社員の行動規範の基です。

「豊田綱領」(現代語訳)には、「心をひとつにして、力をあわせて誠実に業務にあたり世のため人のために貢献しなければならない」「体裁や見栄えを繕わず、愚直に堅実に真正面から、本質に取り組まなければならない」「世界の多様性を尊重し、トヨタグループの営みは、多くの人々や社会によって支えられていることに感謝の気持ちを持ち続けなければならない」と記されています。

4月1日には、佐藤恒治執行役員が社長に就任し、豊田社長は会長に就きます。

今年の統合報告書では、「どの様にモビリティカンパニーに生まれ変わるのか」と言う新社長のコミットメントや、「次世代BEV(電気自動車)」に関する戦略を詳細に開示したらいかがでしょうか。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #ESG経営

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