来ハトメ工業、脱炭素化成功の秘訣は年間40回の環境教育

記事のポイント


  1. 来ハトメ工業が脱炭素チャレンジカップの環境大臣賞グランプリに決まった
  2. 2010年から年間40回の環境教育を欠かさず行っている
  3. 地道な省エネ活動により従来比97%のCO2排出量削減を達成した

地球温暖化防止全国ネット(東京・千代田)は2月16日、脱炭素チャレンジカップ2023を開催した。コンデンサ用アルミケース製造の来ハトメ工業(埼玉県八潮市)が環境大臣賞グランプリに輝いた。同社は2010年から、社員に年間40回もの環境教育を続けている。省エネ診断による専門家の助言を取り入れ、地道に省エネ活動を推進したことで、従来比97%のCO2排出量削減を達成した。(オルタナ編集部・下村つぐみ)

脱炭素チャレンジカップは優れた脱炭素への取り組みを表彰する、地球温暖化防止全国ネットが主催する全国大会だ。今年で12回目を迎えた。

学校や企業、自治体から199団体の応募があり、そのうち29団体がファイナリストに残った。

今回、環境大臣賞グランプリに輝いたのは来ハトメ工業だ。同社はアルミ製コンデンサ部品などの製造、販売を行う町工場である。

同社は「2035年までにカーボンニュートラル達成」を掲げ、2010年から社内照明のLED化や使用電力量を監視、調整ができるデマンドコントローラーを用いた節電活動を進めてきた。重油を使わない洗浄機への切り替えや、再生可能エネルギーの導入を進め、取り組みから約8年で2010年比97%のCO2排出量削減を達成したという。

同社の脱炭素化成功の秘訣は、環境教育の徹底だという。同社は2010年から週1回行う会議や社内掲示板で、SDGsの目標を社員個人へと落とし込む「自分事化」の推進やeco検定などの教材の掲示などを行ってきた。省エネ診断による専門家からの助言も積極的に取り入れ、脱炭素化への取り組みについて日々改善を図っている。

同社の石原隆雅氏は、「町工場の地道な取り組みではあるが、いつかは環境優良企業の仲間入りを果たしたいという思いがあった。年間40回にも及ぶ環境教育や、CO2排出量97%削減こそ当社の努力の証だ。2035年のカーボンニュートラルの達成に向けて情熱を絶やさず続けていきたい」と語った。

このほか、社会福祉法人藤英会の特別養護老人ホーム潮見台みどりの丘(神奈川県川崎市)が市民部門・環境大臣賞金賞とマクドナルドオーディエンス賞のダブル受賞を果たした。同団体は13年間にわたり、利用者のオムツをビニール袋ではなく、新聞紙に包んで処分し、累計200トンのCO2排出量を削減した。

地球温暖化防止全国ネットの高田研理事長は、「地域を支える実業高校と地域で頑張っている中小企業、団体がうまくつながっていく接点として、この大会の意義があるのではないかと感じている」と話した。

「脱炭素チャレンジカップ2023」受賞者一覧

環境大臣賞(5件)

グランプリ:来ハトメ工業株式会社(埼玉県)熱意と社内教育で積み上げた中小町工場の脱炭素への挑戦

金賞(学生部門)

広島県立西条農業高等学校 コオロギ広め隊(広島県)食物残渣を利用した昆虫食の普及と宇宙での飼育を目指した取組

金賞(ジュニア・キッズ部門)

大牟田市立明治小学校(福岡県)つながれぼくらの思い!未来の大牟田のために、今できること!

金賞(企業・自治体部門)

日崎工業株式会社(神奈川県)2030年までにCO2排出ゼロを目指す町工場の取り組み

金賞(市民部門)

社会福祉法人藤英会 特別養護老人ホーム潮見台みどりの丘(神奈川県)すべては小さな1歩から

文部科学大臣賞(2件)

社会活動分野:久山町(福岡県)カーボンネガティブ&ネイチャーポジティブのまちづくり

学校活動分野:長崎県立諫早農業高校 バイオ園芸科(長崎県)フードロスニュートラルで目指す環境保護活動

企業団体賞(14件)

セブン-イレブン記念財団 最優秀地域活性化賞:長野県佐久平総合技術高等学校(長野県) カスを価値に!~未来へ佐久酒粕プロジェクト~

ユニ・チャーム最優秀やさしさでささえる賞:ひたちなか市立前渡小学校(茨城県)学校観察園「ほたるの森」生き物を守り「脱炭素の行動」へ

ニトリ最優秀夢・未来賞:三豊市立下高瀬小学校(香川県)STOP地球温暖化~もったいない・ありがとう・楽しく~

勝田環境カーボンニュートラル賞:大阪府立堺工科高等学校 定時制の課程(大阪府)目指せ脱炭素!地球温暖化防止プロジェクト

日本WPA最優秀未来へのはばたき賞:だいやエコクラブ(長崎県)気候変動待ったなし!~こどもだってできるeアクション~

ユタコロジー最優秀チャレンジ賞:ラピスプライベート(京都府)地域の余剰野菜が生まれ変わった【おやさい絵の具】プロジェクト

レンゴー最優秀脱炭素未来づくり賞:八尾市立曙川小学校(大阪府)つながりつづく エネルギー環境教育をめざして

いのちをつなぐSARAYA賞:みなと環境にやさしい事業者会議(mecc)(東京都)meccコンポスト

炭素会計アドバイザー協会賞:青森県立むつ工業高等学校 課題研究 地中熱融雪研究班(青森県)地中熱利用による融雪研究と農業

SOMPO環境財団最優秀わくわく未来賞:杉並区立西田小学校(東京都)「ユネスコスクールNISHITAの挑戦~未来の学校~」

ウェイストボックス最優秀CO₂の見える化賞:エコダイラネットワーク(東京都)市民の環境意識向上と行動変容を促すための取組み

オルタナ最優秀ストーリー賞:株式会社バイオテックス(佐賀県)地域資源を活かした「ZEB化さがモデル」開発への挑戦

気象キャスターネットワーク 最優秀市民・学校エコ活動賞:特定非営利活動法人スパっと鳴子温泉 自然エネルギー(宮城県)鳴子温泉の再生可能エネルギーとしての利活用学習プログラム

再エネ100宣言RE Action賞:株式会社宮城衛生環境公社(宮城県)脱炭素社会の実現に貢献する廃棄物処理業者の取り組み

マクドナルドオーディエンス賞(2件)

株式会社バイオテックス(佐賀県)地域資源を活かした「ZEB化さがモデル」開発への挑戦

社会福祉法人藤英会 特別養護老人ホーム潮見台みどりの丘(神奈川県)すべては小さな1歩から

審査委員特別賞

有限会社リビング館ホンダ(茨城県)カーボンニュートラルハウス誕生「本州でコーヒー園」

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #脱炭素

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