欧州(E U)委員会は2022年12月、2時間半未満の鉄道利用で代替できる短距離の国内航空路線を廃止するフランスの法律を承認した。2021年8月に成立した「気候法」の一部で、施行にはE U委員会の承認が必要だった。この法律に意義を唱えるフランスの航空業界が、欧州の国際航空評議会(A C I)の支援を受けて、E U委員会に提訴していた。E U委員会は3年後に規制の適法性を見直す。(在パリ編集委員・羽生のり子)

国内航空路線の規制は、気候市民会議が、会議終了後に政府に提出した146の提言の一つだった。気候市民会議は、4時間未満で代替交通機関があれば、2025年までに該当する路線を全廃することを提言していた。
この会議は黄色いベスト運動の要求に応える形で、マクロン大統領の発案で2919−20年にかけて開催されたもので、150人の参加者をくじ引きで決めた。国内航空路線規制は、提言の中でも特に野心的なものとして注目を浴びた。
21年に成立した気候法では気候市民会議の提言を一部取り入れたが、4時間未満を2時間半未満に短縮し、経由便が50%以上を占める路線は対象外とした。それでも、「鉄道と競合する」、「代替しても炭素削減効果は薄い」と猛反発した航空業界団体が、E U委員会に提訴した。
E U委員会はこの法律の効果やE U法との適合性を調査した結果、承認しただけでなく、一歩踏み込んで、経由便も対象にすることを仏政府に勧めると発表した。しかし、仏グリーピースなどの環境保護団体はこの判定に満足せず、3年後の規制見直しは、航空業界への配慮であると反発している。
気候法は2021年4月に施行されたが、国内航空路線規制の条項は、EU委員会の判定が出るまでペンディングになっていた。
規制の対象はパリ・オルリー空港と地方都市を結ぶ3路線(パリ/ボルドー、パリ/ナント、パリ//リヨン)と、リヨンーマルセイユ路線だ。パリのもう一つの主要空港であるパリ・シャルル・ド・ゴール空港には経由便が多い上、パリまでの鉄道利用で時間がかかるため、この空港の発着便は対象外となった。
E U委員会の承認は大きな話題となったが、日刊紙「ル・パリジャン」によれば、法律がそのまま施行されても炭素削減効果は薄いという。エールフランスが、規制の対象となるオルリー発着の3路線を、コロナ禍で政府の支援を受け、2020年に廃止したからだ。
気候法を実際に適用するには、具体的な内容を盛り込んだ法律を制定しなければならないが、いまだに法案の段階で、公布には至っていない。法案は、E U委員会の推奨にもかかわらず、シャルル・ドゴール空港など大規模空港の経由便には適用外としている。適用すれば、フランクフルトなど、より遠方の空港を経由して目的地に辿り着くことになるからだという。