記事のポイント
- 政府は今後10年間のエネルギー政策として「GX基本方針」を掲げた
- 内容は原発の最大限活用やアンモニア混焼での石炭火力の維持などだ
- 国際潮流と逆行し「ウォッシュそのものだ」との指摘がある
政府は今後10年間のエネルギー政策として「GX基本方針」を掲げた。しかし、その内容は、原発の最大限活用やアンモニア混焼での石炭火力の維持など、国際潮流と逆行する。認定NPO法人気候ネットワーク東京事務所の桃井貴子所長は「ウォッシュそのものだ」と指摘した。(オルタナ編集部=萩原 哲郎)

政府は2月10日、GX基本方針とGX推進法案を閣議決定した。日本のGX化には10年間で官民合わせて総額150兆円規模の投資が必要とし、政府は民間からの投資を引き出す呼び水として20兆円の「GX経済移行債」を発行する。
GX基本方針では、徹底した省エネや再エネの主力電源化のほか、リスクの高い原発の最大限活動やCO2削減につながらない水素・アンモニア供給網の強靭化、不十分な容量市場の導入、ロシアのサハリン1・2の権益維持など気候変動対策に逆行するような内容が並ぶ。
二酸化炭素の回収・貯留・利用の技術など新技術にも投資するが、実現可能性や2050年までの時間軸から考えて、期待は低い。気候ネットワーク東京事務所の桃井貴子所長に聞いた。
■GXは日本の脱炭素実現に貢献しない
日本のGXは脱炭素を考えるうえで非常に悲観的に見ている。
2015年にパリ協定が発効した後に、世界は脱炭素・脱化石燃料へと動き出した。この流れのなかで火力発電は役目を終えようとしている。しかし、日本のGX(グリーントランスフォーメーション)はその流れに逆行している。
気候危機を回避するために、進めなければならないのは省エネや再エネだ。
しかし政府がGXの方針で重要な取り組みだと示しているのは、省エネ・再エネに加え、原子力や水素・アンモニア、容量市場、ロシアのサハリン油田など、原発・化石燃料の維持推進で、気候変動とは逆行するものだ。
気候変動対策で重要な施策とされたカーボンプライシングについては、GX推進法案で示されたのは企業の自主目標・自主的取り組みの排出量取引で削減効果が全く期待できない。
さらに、排出量取引制度が2026年、炭素に対する賦課金が2028年、有償オークションが2033年と先延ばししして、10年間何もやらないことを決めたようなものだ。
しかも、カーボンプライシングの使途は移行債の償還にあてるというもので、世界で取り組むカーボンプライシングとは全く異なる。脱化石燃料どころか、化石燃料産業の延命に舵を取っているように見える。
世界では、カーボンプライシングの導入が各国で進んでいる。
国際機関からは、パリ協定の気温目標に一致する明示的な炭素価格の水準が、2020年までに少なくとも 40~80ドル/tCO2、2030年までに同50~100ドル/tCO2と国際機関で提言されている。
日本では現状で地球温暖化対策税が1㌧あたり289円と非常に低い税率でとどまる。国際水準よりも大きく遅れを取っている状況だが、それを加速する要素が全く見えてこない。