
「ベルギーは新政権成立後、2015年からの段階的脱原発を目指す」と、既に脱原発を決めたドイツやスイスの主要メディアは31日、一斉に報道した。
2010年6月の総選挙から無政府状態が続いていたベルギーだが、2011年10月中旬、ようやく対立する二つの言語圏の主要6党が、新政権樹立に向けて動き出した。
30日夜の会合では、2003年に可決されたものの先行きが危ぶまれていた「脱原発法」の継続が合意された。
福島の原発事故を受けて、EUは5月に加盟国の原発143基に対し、ストレス(応力)テストを促した。
その際、ベルギーの暫定政権首相は、フランスやイギリスとは対照的に、自然災害だけでなく、操作ミス、ハッカーやテロ、航空機墜落などの人的要因も含めた厳しいテストを行い、結果を公表するべきだと主張。
将来のどのベルギー政府も、ストレステストの結果を無視して原発の稼動期間を決定することはできないとも明言していた。
一方で、1975年稼動開始の原発を10年間延長稼動させようとする電力会社に抗議するため、9月には2000人の反対デモがあった。半数は、この原発の事故により避難区域となる可能性の高いドイツやオランダからの参加者だった。
2003年の法律では、稼動年数が40年に達した原発から止めるとし、2015年に3基、2025年までには全7基を廃止することになっている。だが、あくまでも電力供給を保証できることが前提である。
ベルギーは55%の電力を原発に依存しているため、新政府は発足後6カ月かけて、具体的な短期・中長期計画を策定する。
また、これまで原子力業界が毎年支払ってきた「原子力賦課金」をどれだけ値上げできるかも調査する。
既に減価償却した原発の収益に掛かるこの賦課金は、自然エネルギーの普及促進や公共建物の断熱など、エネルギー変革のために使われる。
電力市場では、脱原発を理由に不適切な料金高騰が生じないよう監視していく必要もあるという。(ベルギー・リエージュ=川崎陽子)