記事のポイント
- 明治は味の素と協業し、酪農業の脱炭素化を進める
- 味の素社製品を使って乳牛のアミノ酸バランスを整え、一酸化二窒素を削減する
- J-クレジット制度を利用し、クレジット代金は酪農家に支払う
明治は3月27日、味の素と協業し、J-クレジット制度を利用して酪農業の脱炭素化を図る取り組みを発表した。味の素社製品を使って乳牛のアミノ酸バランスを整え、排せつ物に含まれる一酸化二窒素(N2O)を削減する試みだ。味の素が、削減した温室効果ガス(GHG)排出量の価値をクレジット化し、明治がそれを購入する。クレジット代金は酪農家に支払われる。(オルタナ副編集長=吉田広子)

牛のげっぷから発生するメタンや、排せつ物から発生するN2Oといった酪農由来のGHG排出量は、全世界の排出量の約3%を占めている(出典:『持続可能な酪農』Jミルク2022)。
明治グループは、スコープ3(間接排出)で、2030年までにGHG排出量30%削減、2050年までに実質ゼロを目指している。同社が「明治オーガニック牛乳」のカーボンフットプリント(CFP)の算定に着手したところ、原材料の調達が91%を占めたという。算定には、二次データ(産業平均の排出原単位データベース)ではなく、酪農家の一次データ(実績値)を使った。
松田克也・明治社長は「酪農業のGHG排出量の策定や削減方法の実装には課題が多く、味の素と協業し、酪農業の脱炭素化に取り組むことになった」と経緯を語る。

具体的には、味の素が開発したアミノ酸製剤「AjiPro-L」を乳牛に投与することで、乳牛のアミノ酸バランスを整え、排せつ物に含まれる一酸化二窒素排出量を削減する。従来の飼料に比べて、約25%の削減につながるという。
これは、J-クレジット制度で規定されている「アミノ酸バランス改善飼料の給餌」という方法論にあたる。
味の素は削減したGHG排出量の価値をクレジット化し、明治がそれを購入する。そのクレジット代金を酪農家に支払うことで、酪農家の収益向上にも貢献したい考えだ。3月末時点で、北翔農場(北海道根室市)が参加し、今後、対象戸数を増やしていく。
気候変動問題やアニマルウェルフェア(動物福祉)の観点から、大豆やアーモンド、オーツ麦など、植物性ミルクの需要が高まっているが、松田社長は「牛乳は栄養価が高く、飲むと心も身体も元気になる。日本の酪農業を守っていくうえでも、持続可能な酪農業を実現していきたい」と話した。