記事のポイント
- 欧州連合(EU)加盟国は、35年以降のエンジン車の販売を事実上禁止する法案を承認
- ドイツ政府の要請を受けて、合成燃料を搭載したエンジン車を例外的に認めた
- ボルボやフォードなど47社は、公開書簡を送り、禁止を維持するよう求めた

欧州連合(EU)加盟国は3月28日、2035年以降のエンジン車の販売を事実上禁止する法案を承認した。ただし、ドイツ政府の要請を受けて、CO2を排出しない合成燃料を搭載したエンジン車を例外的に認めることになった。ボルボやフォードなど47社は、欧州委員会に公開書簡を送り、禁止を維持するよう求めた。(オルタナ副編集長=吉田広子)
欧州議会は2月14日、2035年以降でエンジン車の販売を禁止する法案を採択した。ところが、その後、ドイツ政府が反対に回り、CO2を排出しない合成燃料を搭載したエンジン車を例外的に認めるように求めた。
合成燃料とは、CO2(二酸化炭素)とH2(水素)を合成して製造される燃料のことで、e-fuel(イーフューエル)とも呼ばれている。既存のガソリン車にも搭載できるので、独自動車メーカーのポルシェや伊自動車メーカーのフェラーリなどは、高級車で合成燃料を推進しようとしていた。
EVシフトの法制化をめぐっては、ドイツに続き、イタリアやポーランド、ブルガリアも賛成しない意向を示したため、承認の条件がそろわず、宙に浮いた状態になっていた。
欧州委員会とドイツ政府が調整を進めるなか、ボルボやフォードなど47社は3月20日、禁止を維持することを求めた公開書簡を送った。「合成燃料の容認は、内燃機関の延命措置に過ぎず、気候や人々の健康に悪影響を与える。企業の信頼も損なう」と抗議した。
公開書簡を送ったのは、EVを推進する国際イニシアティブ「EV100」のメンバーで、自動車メーカーだけではなく、イケアやユニリーバ、テスコなど、輸送手段のEV化を進める企業も含まれる。
最終的に例外が認められることになったものの、米CNNは「合成燃料を燃やすと、従来の化石燃料を使用した場合と同量の温室効果ガスと大気汚染物質が放出される。製造プロセスには費用がかかるとともに、多大なエネルギーが必要になる」と懸念を示す。
加えて、「合成燃料はあくまでも航空や海運など、化石燃料の代替手段を持たず、電化が難しい産業のために確保されるべきである」という専門家の意見を紹介した。