記事のポイント
- イタリア政府が培養肉の禁止の方針を明確に、「食文化の保護」が理由
- 法案が成立すると動物の細胞組織から食用肉などの製造を禁止する
- 培養肉はシンガポールや米で認可事例も、慎重な対応を求める声
イタリア政府はこのほど、「食文化の保護」を理由に培養肉の禁止方針を明確にした。海外メディアが報じた。法案が成立すると動物の細胞組織から食用肉などの製造が禁止される。培養肉はシンガポールや米で認可事例があるが、慎重な対応を求める声も出ている。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

法案では、動物の細胞組織から培養肉などの製造や使用を禁じる。違反者に対して最大6万ユーロ(約862万円)の罰金を科す。
培養肉の禁止を求めるロビイスト団体は、数カ月で50万筆の署名を集めていた。この署名のなかには、メローニ首相も含まれる。
ユーロニュースによると、フランチェスコ・ロロブリジーダ農相は「細胞培養食品は品質、ウェルビーイング、そして私たちの文化の保護を保障していない」と発言した。
■日本でも慎重な対応を求める声
培養肉は13年にオランダ・マーストリヒト大学の教授が開発した「培養肉ハンバーガー」が初とされる。その後、世界で研究開発が進展した。20年12月にシンガポールのレストランで世界で初めて培養肉が販売された。昨年11月には米・FDAが培養肉を食用として認可した。
日本でも研究開発が進む。経済産業省はこのほど示した「バイオものづくり革命推進事業研究開発計画」のなかで、培養肉などの生産技術などに対しての支援を決めた。
しかし、慎重な対応を求める声も挙がる。消費者団体などは昆虫食や培養肉について、事前の安全性審査の実施などを求めている。
最近では昆虫食の安全性などについて国内で大きな議論が起こった。培養肉も今後、議論を呼ぶ可能性がある。