記事のポイント
- EV用バッテリーには、コバルトやリチウムといった希少金属が不可欠だ
- しかし、その採掘現場や生産プロセスでは、児童労働や強制労働が起きている
- 人権に関する情報開示を進めなければ「ウォッシュ」と批判されるリスクも
電気自動車(EV)用バッテリーには、コバルトやリチウムといった希少金属が不可欠だ。しかし、その採掘現場や生産プロセスでは、児童労働や強制労働が起きている。自動車メーカーは環境性能だけでなく、人権に関する情報開示を進めなければ、「ウォッシュ」と批判されるリスクもある。(オルタナ副編集長=吉田広子)

米人権保護団体インターナショナル・ライツ・アドボケイツは2019年12月、コンゴでのコバルト採掘で児童労働を助長したとして、テスラ、アップル、アルファベット、デル・テクノロジーズ、マイクロソフトの5社を提訴した。採掘現場で死傷した子ども数十人の家族の代理として、訴訟を起こしたのだ。
2021年11月に「関連性を示すことができない」として、訴えは棄却された。しかし、現地報道によれば、連邦裁判所は「該当企業が間接的にでもコンゴでコバルトを調達しなければ、何人かの子どもは助かった可能性がある」との見解を示した。
コバルトは、EVや電子機器に搭載されるリチウムイオン電池の主要な原料だ。7割近くがコンゴ民主共和国(DRC)で生産されている。そのうち2割は、手堀りで採掘される。ユニセフの推計(14年)によると、約4万人の子どもたちが危険な採掘現場で働かされているという。1日10時間以上働いても、その報酬はわずか1日200円程度だ。
■ 米上院委が自動車各社に質問状
自動車の人権リスクは、原材料の調達にとどまらない。
英シェフィールド・ハラム大学は2022年12月、「世界の主要な自動車メーカーは新彊ウイグル自治区の強制労働に直接・間接的にかかわっている」との報告書を発表した。現代奴隷制を専門とするローラ・マーフィー教授ら調査チームがまとめた。
これを受け、米上院財政委員会は、トヨタ自動車、ホンダなど大手自動車メーカー8社に質問状を送付した。
※本記事は、オルタナ72号(2023年3月30日発売)の第一特集「ウォッシュ監視――国連も行政も」から一部抜粋して掲載しています。ますます厳しくなる国内外のグリーンウォッシュへの規制について、事例を交えながら、最新動向を紹介しています。
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