303の企業や自治体「カーボンプライシングの早期導入を」

記事のポイント


  1. 気候変動イニシアティブは日本政府に対する声明を公表
  2. 再エネの導入加速とカーボンプライシング制度の早期導入を求めた
  3. リコーやオムロンなど303の企業・NGO・自治体などが賛同した

G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合で日本が提案する共同声明の草案を巡り、各国の主張が対立しているようだ。そうしたなか、気候変動イニシアティブは4月12日、日本政府に対し、再生可能エネルギーの導入加速とカーボンプライシング制度の早期導入を求めるメッセージを公表した。この声明には、リコーやオムロンなど303の企業・NGO・自治体などが賛同している。(オルタナ副編集長=吉田広子)

2022年のG7では、「2035年までに電力供給の全て、あるいは大部分を脱炭素化する」ことで各国が合意した。しかし、日本は第6次エネルギー基本計画で、2030年の電源構成を再生可能エネルギー36-38%、石炭火力19%、液化天然ガス(LNG)火力20%と定め、2035年までに電力部門の脱炭素化を実現できるかどうか疑問が残る。

各社の報道によると、2023年のG7の共同声明の草案では、石炭火力発電の段階的廃止期限やLNGに関する記述を巡り、各国の意見が対立している。

こうした日本政府の消極的な姿勢に対する危機感から、JCIは、メッセージ「再生可能エネルギーとカーボンプライシングで二つの危機を打開する」を公表した。JCIは、自然エネルギー財団、CDPジャパン、WWFジャパンが共同で事務局を務める組織だ。

同声明では、日本政府に対し、2035年までに電力の大半を再エネで供給すること、2030年度排出削減目標を確実に達成し、さらに高みをめざすために、実効性の高いカーボンプライシングの早期導入を求めた。

これに賛同したのは、225の企業、16の自治体、62の団体・NGO、計303団体だ。賛同企業には、リコーやオムロン、アサヒグループホールディングス、イオンなど東証プライム上場企業118社を含む。

地方自治体では札幌市、世田谷区、神奈川県、横浜市、京都府、大阪市など1府3県12市区が賛同している。

国際エネルギー機関(IEA)は、「2050年ネットゼロ」を実現するためには、先進国では2030年に130ドル/トンの炭素価格が必要だとしている。日本政府は「GX実現に向けた基本方針」の中で、カーボンプライシングを導入する方針を示したが、炭素賦課金の導入は2028年度以降で、排出量取引制度は今後10年間は自主的なものにとどまるとされている。

さらに、炭素価格の水準はIEAの提言の10分の1程度にとどまると推計されている。

JCIの末吉竹二郎共同代表(元東京三菱銀行信託会社<NY>頭取)は「日本政府が、気候変動対策とエネルギー危機への対応で立ち遅れているのは明白だ。再エネは、世界でビジネスをするための必須条件であるにもかかわらず、日本では再エネの供給不足が発生している。このままでは、日本企業はグローバルマーケットから追い出される」と危機感を募らせる。

「日本のGX基本方針は、150兆円という金額の大きさが強調されるばかりで、CO2排出量をどう削減していくか、議論されていない。世界ではGXを実現するために熾烈な競争が繰り広げられているが、日本は20世紀に取り残されている。気候変動とエネルギーという2つの危機に対応できる基盤づくりを進めるべきだ」と続けた。

yoshida

吉田 広子(オルタナ輪番編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。2025年4月から現職。執筆記事一覧

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キーワード: #脱炭素

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