記事のポイント
- 車いす生活をきっかけに地域コミュニティの大切さに気付いた
- 食料やエネルギーは地域のもので賄う「地域自給」の生活を送る
- 今後は補助金に頼らないNPO経営の実現に挑戦する
北海道余市町でエコビレッジを運営し、持続可能な社会に必要な技術やコミュニティの考え方を広める取り組みが続いている。立ち上げたのは、NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト理事長の坂本純科さんだ。エコビレッジでは食料やエネルギーを自ら生成し、足りない分は地域のものから賄う「地域自給」の生活を行う。(オルタナ編集部・下村つぐみ)

NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクトは現在の余市町に拠点を構えて、今年で11年目を迎えた。同エコビレッジでは、持続可能な暮らしを体験できる宿泊プログラムや地域づくりに必要なことを学べる研修ツアーなどを提供する。
同プロジェクトの発起人で、理事長の坂本さんによると、自身の車いす生活が世界の課題に目を向けることとなった一番のきっかけだったという。坂本さんは24歳の頃、パラグライダーの事故が原因で車いすの生活を経験した。その頃に出会った障がいがある友人の存在がきっかけでNPO活動に携わるようになった。
海外の障がい者を支援するNPO活動を通して、コミュニティの重要性に気付いた彼女は、「持続可能な暮らしとコミュニティ」をテーマとする「エコビレッジ」のモデルをつくりたいと思ったという。
北海道余市町を拠点に選んだのは、札幌から90分圏内で、生活をシフトしたいと考えている都会からの参加者がアクセスしやすいためだ。このほか、地権者や近隣住民といい関係が築けそうだったことも北海道余市町を選んだ理由だったそうだ。
2016年以降、年間約1000人のプログラム参加者や宿泊者、ボランティアなどが訪問している。
■ローカリゼーションを推進する
同エコビレッジでは、坂本さんや住み込みスタッフはじめ、農業指導やワイン醸造など5件の近隣農家が運営に携わっている。全員が持続可能な能的暮らしを求めて移住してきた新規就農者だ。
食料は約20種類以上の野菜を有機栽培し、自分達で生産した卵や狩猟した鹿肉をコミュニティで分け合う。薪ストーブの薪は北海道余市町の廃材を使うなど、必要なものはできるだけ地域のものに限定して調達する。
最近では、地域の事業者と一緒に修学旅行生を受け入れたり、余市町で働く方のインタビュー動画を配信し、地域ぐるみで研修事業を拡大している。
プログラム参加者は、このような持続的な暮らしを体験したり、持続的な暮らしにちなんだ地域の取り組みを学んだりできる。
同エコビレッジはこれまで、セミナーやワインの販売などの収入と国や民間財団の補助金で運営してきた。今後は研修を企業向けに実施したり、サポーターから会費を集める仕組みを拡大し、自立したNPO経営に挑戦するという。
坂本さんは、「条件に縛られず、自分たちが納得する活動をするため、補助金に頼らないNPO経営を目指すことにした。100人が1時間滞在するのではなく、1人100時間滞在するような関係を目指し、より一層コミュニティの促進と持続可能な暮らしを伝えていきたい」と話した。