記事のポイント
- 入管法改正案を巡り攻防が続き、与党は28日、衆議院の法務委員会での採決をねらう
- 立憲民主党は反対の立場を固辞する方針だ
- 廃案を求める声は日に日に大きくなり、廃案になる可能性も残る
入管法改正案を巡り攻防が続くなか、与党は28日、衆議院の法務委員会での採決をねらう。立憲民主党は反対の立場を固持する方針だ。与党は強行採決をも辞さない構えだが、廃案を求める声は日に日に大きくなり、廃案になる可能性も残る。(オルタナ副編集長=吉田広子)

入管法改正案は3月7日に国会に提出され、4月13日に衆議院で審議入りした。その後、修正協議が進み、各社の報道によると、4月27日に自民、公明、日本維新の会、国民民主党の4党が修正案に合意した。
与党は28日に修正案を国会提出し、強行採決に踏み切りたい考えだ。与党は立民が修正案に反対した場合、立民の修正には応じないと揺さぶりをかけていたが、立民は反対を固持した。近く対案を提出する予定だ。
認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウの小川隆太郎事務局長(弁護士)は、修正協議に関して、「原則収容主義など、法律の骨格を変えなければ国際基準を満たせない。小手先の修正では対応できず、廃案の選択肢しかない」と話す。
■「与党の法案は止められない」は間違い
このように入管法改正案を巡る攻防が続いているが、2021年に続き、今回も廃案になる可能性は残る。その方法は3つ考えられる。
1つは、2021年と同じように、改正反対の声を受けて、与党が法案を取り下げることだ。
国連人権理事会に任命された複数の特別報告者は、日本政府に対し、入管法改正案が「国際法違反」だとし、見直しを求める共同書簡(4月18日付け)を送った。
4月21日夜には、廃案を求める集会が国会前で開かれ、約2000人が集まった。25日には、クルド人の子どもたちなどが国会前で「入管法改正反対」の声を挙げた。連日、衆議院議員会館前でシットイン(座り込み)が続くほか、SNS上のキャンペーンも盛り上がる。28日夜にも、シットインが行われる予定だ。
もう1つは、時間切れによる廃案だ。第211回国会の会期は6月21日まで。与党は26日にも強行採決をねらったが、法務委員会は流会になった。28日の法務委員会も流会になる可能性がある。仮に28日に採決したとしても、成立までには、衆議院での本会議、参議院での法務委員会、参議院での本会議で採決されなければならない。
ウィシュマさん死亡事件の弁護団の一人、指宿昭一・弁護士は「与党が法案を出したら止められないという思い込みがあるが、それは間違いだ。政治家は市民の批判に耳を貸さなければ、選挙で負ける。あきらめないで声を上げ続けてほしい」と訴えた。
3つ目は、裁判所が日本の入管収容を国際法違反だと認めることだ。難民申請中のサファリさんとデニズさんは、自身になされた入管収容が、自由権規約で禁止されている「恣意的拘禁」にあたり、違法だと訴えている。違法な収容をした国に対して損害賠償を求める。
弁護団は、この「日本の入管収容は国際人権法違反」訴訟を通じて、日本の入管収容が国際人権法に違反していることを明らかにし、これからの入管収容のあり方を変えていくことを目指す。