記事のポイント
- 花王は国内最大規模の「バーチャルPPA」をみずほ銀とみずほリースと締結
- バーチャルPPAは2022年から始まった新しい電力形態で、同社の採用は初だ
- CO2年間排出量の3%に相当する約7,336トンの削減につなげる
花王は4月28日、国内最大規模の「バーチャルPPA(電力購入契約)」をみずほ銀とみずほリースと締結したと発表した。同社はみずほリースが新設する太陽光発電所(容量15.6MW)の再エネ電力の「環境価値」を全量購入する。バーチャルPPAは2022年から始まった新しい電力形態で、同社が採用するのは初だ。CO2年間排出量の3%に相当する約7,336トンの削減につなげる。(オルタナS編集長=池田 真隆)
この締結により、花王はみずほリースグループが新設する太陽光発電所が創出する再エネ電力の「環境価値」を全量購入する。その量はバーチャルPPAでは国内最大規模となる、15.6MWだ。発電所は新設のため、花王は「追加性」のある形で再エネを導入できる。
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花王は購入した環境価値を今年7月以降にすみだ事業場(東京・墨田)の使用電力に活用する予定だ。すみだ事業場の使用電力は、トラッキング付のFIT非化石証書 によって、2021年に100%再生可能エネルギーに切り替え済みだ。今回のバーチャルPPAによって、「追加性」のある再生可能エネルギーに全て切り替える。
同社では2040年までにカーボン実質ゼロ、2050年までにカーボンネガティブを脱炭素の長期目標として掲げる。今回の締結はその一環で行った。年間で同社のCO2排出量の約3%(2021年)に相当する約7,336トンのCO2排出量の削減につなげる。
■バーチャルPPAは再エネ電力の「環境価値のみ」を購入する新形態
コーポレートPPAの一つである「バーチャルPPA」は2022年から始まった新しい電力の契約形態だ。需要家は発電事業者と、電力そのものと環境価値を分離して取引できるのが特徴だ。
日本では電力と環境価値を合わせて取引する「フィジカルPPA」が増えていたが、近年では電力の環境価値のみを購入できる「バーチャルPPA」が注目を集める。
その理由は、需要家からすると「追加性」のある形で再エネを導入することができるからだ。バーチャルPPAを締結した需要家は、自社の敷地外にある発電所で発電した再エネ電力の「環境価値のみ」を非化石証書などで調達する。発電所が新設である場合、需要家は「追加性」のある形で安定的に再エネの導入ができるのだ。
■スコープ1,2の脱炭素化に社内炭素価格を活用へ
花王は2050年カーボンネガティブという長期目標に向けた中間目標として、2030年までにスコープ1と2でCO2排出量55%削減(2017年比)を目指す。2022年の実績は26%削減だ。
スコープ1、2の戦略として、同社の購買部門間接材戦略ソーシング部に所属する加藤宏和氏は、「今回のバーチャルPPAの採用や自家消費用の太陽光発電設備の設置など、再生可能エネルギーの導入を進めながら、社内炭素価格を活用し、脱炭素に貢献する設備の導入を進めていきたい」と話した。
一方、長期目標の達成のためには、スコープ3に大きな課題がある。同社のライフサイクルCO2排出量はスコープ3の「使用」段階が42%と最も大きい。加藤氏は、「使用段階でのCO2削減も推進していく」と課題を挙げた。