記事のポイント
- ウエルシアHDとP&Gジャパンは「インクルーシブ・ショッピング プロジェクト」を開始
- 両社は接客時の注意点をまとめたハンドブックを共同開発した
- ウエルシアは新宿店を皮切りにLGBTQフレンドリーな店舗づくりを進める
ウエルシアホールディングスとP&Gジャパンは5月15日、LGBTQ当事者が安心して買い物できるように配慮する「インクルーシブ・ショッピング プロジェクト」を開始した。接客時の注意点をまとめたハンドブックを共同開発したほか、ウエルシア新宿店を皮切りにLGBTQフレンドリーな店舗づくりに取り組む。(オルタナ副編集長=吉田広子)

P&Gジャパンは2021年5月から、自社の経験や知見を役立ててもらおうと、「P&Gアライ育成研修」を社外向けにも提供してきた。
その一環で、ウエルシアホールディングスは2022年夏から、P&Gジャパンと、LGBTQに特化した求人サイトを運営するJobRainbow(東京・渋谷)とともに、LGBTQについて学ぶワークショップを開催した。
日用品や薬などを買い物する際の悩みやニーズ、実体験のヒアリングも行った。LGBTQ当事者173人、ウエルシア従業員2265人にアンケートを実施し、その内容を基に接客時の注意点を「インクルーシブ・ショッピング ハンドブック」としてまとめた。ウェブサイトから誰でもダウンロード可能だ。

調剤薬局では本人確認が必要だが、当事者から、「『名前から連想される性』と『見た目から連想される性』が異なる場合、『代理人ですか』と聞かれて困った」という実体験が寄せられた。そこで、ハンドブックでは、「全てのお客様にお伺いしておりますが、ご本人様ですか」と投げかけることを推奨している。
このほか、化粧品の説明をする際には、「女性らしい」「異性ウケが良い」という言葉を使わず、「お客様らしい」「お客様にお似合いです」といった言葉に言い換えることを勧めている。
星賢人JobRainbowCEOは、自分用の化粧品を選ぶときに、「彼女へのプレゼントか」聞かれ、買い物しにくい状況があることを明かした。
■性別ではなく機能別でスキンケア用品を陳列

ウエルシアは、LGBTQフレンドリーな店舗づくりを目指す。「ウエルシア O-GUARD 新宿店」を皮切りに、まずは旗艦店28店舗で取り組みを進める。LGBTQ当事者だけではなく、誰でも安心して買い物しやすい環境にすることが目的だ。
新宿では、一部の店舗レイアウトを変更。主な変更点は次の3点だ。
1つ目は、1階にあった男性化粧品売り場を2階に移動。1階は多くの来店客やスタッフが出入りすることから、人目に付きにくい場所に移設した。
次に、2階にある基礎化粧品の棚は、性別にかかわらず、求める機能に応じて商品を選べる棚割に変更した。
3つ目は、調剤エリアに個別相談ブースを設置した。調剤エリアは、個人情報やセンシティブな情報を取り扱うことが多く、声が漏れにくく、書類や処方薬なども見えにくい個別相談ブースを設置した。
松本忠久・ウエルシアホールディングス社長は「新たな一歩を踏み出すことができた。買い物しやすい環境がこれで完全に整備されたわけではない。プロジェクトを進める過程で得られた学びをこれからの店舗づくりに生かしていきたい」と話した。
住友聡子・P&Gジャパン広報渉外執行役員は、「当社は、各国で多様なブランドを展開しており、多様なインサイトを理解することが必要だ。ウエルシアとの協働は、多様な客とのタッチポイントになる。この活動を通じて、多様性に対する理解をより深め、イノベーションにつなげていきたい」と語った。