G7サミット、「脱炭素」「ジェンダー」は詰め切れなかった

記事のポイント


  1. G7広島サミットの首脳コミュニケ(声明)に対して、NGOから批判が相次ぐ
  2. 脱炭素については、「極めて不十分」と専門家は指摘した
  3. ジェンダーについては、実態と乖離した声明の内容に批判が出ている

日本が議長国として迎えた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は5月21日、3日間にわたる日程を終え、閉幕した。20日に首脳コミュニケを発表したが、脱炭素や人権、ダイバーシティに関して、国際NGOなどから厳しい批判が相次ぐ。(オルタナS編集長=池田 真隆)

「G7首脳は気候危機の緊急性に対応することに失敗した」――。国際環境NGO 350.org Japanは21日、声明を発表し、首脳コミュニケを批判した。

首脳コミュニケでは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による最新報告を踏まえ、「2019年比で世界の温室効果ガス排出量を2030年までに43%削減、2035年までに60%削減」することの緊急性を認識し、排出削減目標の強化に触れた。

化石燃料のフェーズアウト、風力と太陽光の数値目標、石炭火力発電の新設の停止にも触れた。先進国がインドネシアなどでの石炭火力発電所の廃止を支援する「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETPs)」の進展を歓迎する文言も盛り込んだ。

しかし、同団体は、気候危機の緊急性に照らせば、「極めて不十分」と言い切る。その理由について、声明文ではこう述べた。

「石炭火力発電の2030年までのフェーズアウトについては日本が最後まで抵抗した。化石ガスへの公的支援を許した。日本が推す水素・アンモニア混焼の電力部門への利用、原子力発電、炭素回収利用貯留(CCUS)といったグリーンウォッシュ対策が、条件付きながら言及された」

首脳コミュニケとは別に発表した、「G7クリーンエネルギー経済行動計画」については、その目標や方策に具体性を欠いていると指摘した。

国際環境NGO 350.org Japanの伊与田昌慶・チームリーダー代理は、「G7首脳コミュニケによって、日本がいまだに汚い化石燃料や危険な原子力に依存し、アンモニアや水素混焼などの『グリーンウォッシュの商人』としての役割を担っていることが明らかになった」とコメントした。

ジェンダーは実態と乖離

ジェンダーに関する項目についても批判が出ている。首脳コミュニケでは、「性的マイノリティの人権と基本的自由に対するあらゆる暴力と侵害を強く非難する」などと明記したが、日本はG7の中で唯一、LGBTQに関する「差別禁止規定」を持たない。

LGBTQ支援団体などは、G7に合わせて与党が国会に提出した「LGBT理解増進法案」を巡り、同法案に「差別禁止規定」を制定することを強く要望する。

一般社団法人LGBT法連合会などの支援団体は23日、都内で会見を開き、首脳コミュニケの問題点やLGBT理解増進法を取り巻く問題について説明する予定だ。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #SDGs

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